「いずれにせよ、感情的にならないことが大前提です。相手の成長か状況の改善につなげようとする心構えをもって叱ること。それが部下に伝わることが必要です」(同氏)。

「褒める」のが苦手な人は「認める」ことから始めよう

 そして、こうした叱り方のポイントを押さえることとともに、「褒める」チャンスを上手に生かすことで、部下の働く姿勢は変わると藤咲氏は説明する。

「少しでもできたことがあったら褒めることが、部下の自信につながります。チャレンジしていることを褒めれば、部下は積極的にチャレンジをするようになるでしょう。自信は主体性につながります。逆に、欠点の指摘ばかりだと、叱られないためにどうするかばかり考えるようになり、部下は自分からは動かなくなります」

 しかし、自分の考えるレベルに達していないと思っている部下を「褒める」ことに抵抗感がある、という上司もいるかもしれない。そうした上司に対し藤咲氏は、まず「認める」ことを意識するように勧める。

「褒めるというのは、ウソを言っておだてるということではありません。相手の良いところを認め、それを伝えるということです。できていることは『できて当たり前』と思っているリーダーは、いつも欠点の指摘から始まってしまい、そのうち褒めるチャンスを失ってしまうのです。欠けたリンゴを見ると、欠けている部分が気になるのが人間です。ですから、良いところを認める、つまり褒めるのには努力が必要なのです」

 また、「褒めたい」と思っていても、とっさに言葉が出てこないという人は、相手が喜ぶ定番の言葉を使うことから始めるといいという。たとえば、藤咲氏が独自にとった「職場で言われて嬉しい言葉」のアンケートによるベスト5は次のとおり。これなら、日常的に使えそうだ。

 1.よくやっているね
 2.君ならできる
 3.ありがとう
 4.助かった
 5.いつも頑張っているね

「とくに感謝の言葉は大切です。上司に感謝されている部下は、一生懸命に仕事をします。このような『褒める、認める、感謝する』言葉が行き交う職場は、それが風土となって、コミュニケーションが円滑になり、仕事が効率的に進められるようになるはずです」(同氏)