どうしてもっと「主体性」を持って働いてくれないのだろう――。部下に対し、そんな悩みを抱える上司の方も多いのではないだろうか。
一方で、部下の働き方は上司の行動や態度に左右される、という面もある。では、部下が主体的な働き方をするために、上司が気を付けるべきなのはどのようなことだろうか。自立型人材育成カリキュラムを用いて年間300日以上を社員研修に費やし、『ぐんぐんと部下が育つリーダーの55の成功習慣~信頼されるリーダーになるための教科書』(セルバ出版)などの著書がある、藤咲徳朗氏にその要諦を聞いた。
部下の「やる気」がないのは上司のせい?
中間管理職に対するアンケート調査をまとめた「日本のミドルマネジャー白書2016」(日本経営協会)によると、「OJTを行う上での悩み」として最も多い回答は「指示したことはやるが自発性が見られない」(32.8%)で、「20代の社(職)員に身につけて欲しい能力」として最も多い回答は「主体性」(60.9%)となっている。
こうした統計からも、部下にもっと主体性や自発性を持ってほしい、と感じている上司は多いことが分かる。自分から積極的に動かない部下のことを、やる気がないのではないか、とすら感じている上司の方もいるだろう。しかし、藤咲氏はその原因が上司自身にもあることが少なくないと指摘する。
「上司の叱り方に問題があるケースもあります。端的なのは『やる気があるのか』という言葉。これを言われた部下は、ほぼ100%やる気がなくなります。さらには『この上司、私の仕事を見てくれていない』と悲しい気持ちになることもあるでしょう」
藤咲氏は、このような「悪い叱り方」として、よくある3つのパターンを挙げる。1つめが「目に見えないものを叱る」というもの。「やる気があるのか」はこのパターンに当てはまる。
「目に見えないものを対象に叱られても、部下はどうしたらよいかイメージできません。できたとしても、上司とは違うイメージを持っています。そのため、上司自身が思う『具体的な改善行動』を一緒に伝えることが大事です」(同氏)。