この状態が最高と認識されるようになったのは、実際に大成功している人にそういう人が多いからという理由もあります。仕事=趣味の境地で楽しんで仕事をしている(4)の境地に達した人は、はたから見ると、とっくに目的を達しているように見えるのに挑戦し続け、非常に高いパフォーマンスを発揮し続けます。

 とはいえ、趣味を仕事にできるような人は現実的には多くありません。仕事となるとなかなか好きなことだけやるわけにはいかないのが多くの人の実際です。なかなかこの境地に到達できる人は少なく、レアで貴重な境地ということが言えるでしょう。

アメフト選手へのアメとムチ

(1)(2)の世界は基本的に無気力な人間を権力で強制的に動機付けるのに対し、(3)(4)の世界は基本的に自律的である、ということになります。その2つの世界の間には大きな断絶があります。

 今話題のアメフトの危険タックルの話を分かりやすい例として取り上げると、日大の宮川選手は記者会見で、「とても楽しいスポーツだと思い、熱中していました。ただ、大学に入って厳しい環境になって、徐々に気持ちが変わっていってしまった」「好きだったフットボールがあまり好きではなくなってしまった」と答えています。

 一方、監督とコーチの記者会見からは、「優しすぎる」「おとなしすぎる」「失敗を恐れないように。怖がっていると伸びないから」「思いっきりやってほしかった。覚悟を決めてほしかった」というように、基本的に選手を(1)の無気力・無関心の人間と見ており、練習に出さない等のアメとムチで強制的に動機付けしようとしていたように思います。

 楽しくてしょうがなく熱中して自律的に努力していた、元々(3)(4)の世界(喜び・自律)にいた選手も、(1)(2)の別世界(アメとムチ)に入ってしまうと、本来持っていた内在的な動機付けも失ってしまう。こういう逆コースは、これから少ない人材を有効活用しないといけない日本企業にとっては絶対に避けたいことであり、他山の石となるでしょう。