しかしこうした独自開発だけでは、あらゆる技術で先を行く米ソの戦闘機、そして米国製戦闘機を導入する日本や韓国との戦力差は開く一方でした。
そんな周回遅れのような状況の転機となったのが、1991年のソ連崩壊です。中国は東側諸国の混乱や懐事情に乗じて、積極的に海外技術を導入していきます。
その嚆矢として、まず財政難だったロシアとの間で、現在も世界各国で絶賛運用されている「Su-27」(通称:フランカー)のライセンス契約を締結し、これを「J-11」として生産を開始します(95年)。
このJ-11ですが、初期のA型は紛れもないライセンス生産品だったものの、「地上攻撃力など必要な機能を追加、カスタマイズした」として作られた後期のB型に関してはロシアから抗議を受けています。抗議の内容は、中国はB型の製造にあたって「ライセンス契約でロシアからの調達が義務付けられていた部品をコピーし、自国で生産・使用している」というものでした。しかし中国はロシアから「知財権の侵害に当たる」という抗議を受けてもどこ吹く風で、J-11Bの発展形に当たる「J-16」の運用を既に開始しているようです。
なお、ロシアは旧ソ連時代にもライフルの「AK-47」を中国に違法コピーされまくっています。もしかしたら最も中国の違法コピーの餌食になっているのはロシアかもしれません。
イスラエルから技術者を引き抜き
上記のJ-11の開発と同じ時期に、中国はもう1種類の陸上機である「J-10」の開発・生産も始めています。
大型双発(エンジンが2基)のJ-11に対し、J-10は小型単発(エンジンが1基)です。中国はあくまでJ-10は独自開発機種だと主張していますが、イスラエルが米国と共同開発していたIAI社製試作機「ラビ」をベースに開発したことは周知の事実であり、技術者を引き抜いて開発したと各所から指摘されています。実際にJ-10の機体はラビの特徴的な外観にそっくりで、隠す気はまったくないようです。
J-10は現在までに大型アップデートがすでに2回行われており、初期型のA型に対してそれぞれB型、C型と区別されています(最新のC型は中国メディアから「魔改造」という表現を用いて紹介されています)。
このほか中国は2001年頃に、旧ソ連が開発していた空母と試作艦載機をウクライナから購入、調達しており、その後の中国国内での改造を経て、どちらも中国にとって初となる空母「遼寧」および艦載機「J-15」(2013年運用開始)へと至っています。J-15はSu-27の艦載機版「Su-33」(通称:シーフランカー)の試作機をベースに開発されており、今後の空母運用でメインに使われることでしょう。