ゴーン氏は、日産の経営再建の手腕を評価され、ルノー本体のCEO(最高経営責任者)に就任した。だが、日産のCEOも兼務したことから、ゴーン氏1人で両社の舵取りを行うという体制が長く続いてきた。これはガバナンス上あまり望ましいものではないが、ゴーン氏という「人」に依存する形で、ルノーと日産の良好な関係が続いてきたともいえる。

マクロン政権はなぜ経営統合を求めるのか

 ゴーン氏は現在64歳だが、そろそろ退任後の道筋についても検討しなければならない時期に来ている。ゴーン氏は2017年2月、日産のCEOを退任し、代表権を持つ会長のみの役職となった。

 ゴーン氏は当初、ルノーのCEOも退任して各社にCEOを置き、自身はルノー、日産、三菱の取りまとめを行うポジションに就くという青写真を描いていた。

 だがこうした状況に待ったをかけたのがフランス政府である。フランス政府はルノーの筆頭株主であり、事実上、ルノーはフランス政府の支配下にある。フランスでは2017年の大統領選挙でマクロン政権が誕生した。産業政策を得意分野とするマクロン大統領は、ゴーン氏に対して3社連合を見直し、ルノーと日産を完全統合するよう求めたとされる。

 もっともフランス政府はマクロン政権が誕生する2年前の2015年にも経営統合を求めたことがあり、ルノーと日産の完全統合はマクロン政権特有の動きというわけではない。

 フランス政府がルノーと日産の経営統合を求める理由は2つある。

 1つは規模のメリットの追求である。グローバルな自動車市場は成熟期を迎えており、上位4社による寡占が急速に進んでいる。2017年における各社の販売台数は、1位のフォルクスワーゲンが1070万台、2位のルノー・日産連合が1060万台、3位のトヨタが1040万台、4位のGM(ゼネラルモーターズ)が990万台であった。5位の現代自動車は730万台、6位のフォードは660万台とかなりの開きがある。