今後の自動車業界は上位4社に入っていないと生き残りが難しく、上位4社におけるシェア争いも熾烈となる。ルノー・日産連合にとっては、3社の緩い連合体ではなく、1社に完全統合した方がコストメリットが大きくなるのは間違いないだろう。
もう1つの理由はフランス国内の事情である。
マクロン政権は産業政策を推進しており、フランス国内の生産を拡大することで雇用を増やそうとしている。ルノーと日産が完全統合すれば、日産の工場をフランスに移転することが容易になり、国内の雇用増が見込める。日産のオペレーション上、それがベストの選択なのかは何ともいえないが、少なくともルノーの大株主であるフランス政府はそう見ている。
ゴーン氏はあくまでフランス人
当初、ゴーン氏はフランス政府の方針に対して慎重な姿勢を示していたが、最近ではフランス政府に理解を示す発言が多くなってきた。背景にあるのは、ゴーン氏に対するフランス国内の反発である。
日本においてゴーン氏は、典型的なグローバル企業のトップとみなされている。ゴーン氏は極めて高額な役員報酬を受け取っているが、日本ではゴーン氏はグローバル人材なのだから高額報酬は当たり前であるとの見方が一般的だ。
だが現実はだいぶ異なる。ゴーン氏はあくまでフランス企業を経営するフランス人であって、いわゆる無国籍なグローバル人材ではない。
常識外れの役員報酬が許容されるのは、一部の限られた企業であって、一般に欧州では極端な高額報酬は社会的に許容されない。実際、ゴーン氏はフランス国内の世論に配慮して、かなりの期間、ルノー本体からは高額の役員報酬を受け取ってこなかった(その分を日産からの高額報酬でカバーしてきた)。
フランス国内では、ゴーン氏がフランスのために働いていないのではないかとの声もあり、引き続きルノーの取締役に選任されるためには、フランス政府やフランス国民の意向に配慮せざるを得ない状況にある。