自国企業に対して、自国の国益に沿って行動するよう求めるのは、日本もフランスも同じであり、フランス政府やフランス国民の動きを批判しても何も問題は解決しない。
いざという時に外資に頼ってしまう日本
最終的にルノーと日産がどのような形に落ち着くのかは、フランス政府とゴーン氏次第ということになるだろう。日本側には、日産がルノーの株式を買い増すことで、相互出資を強化して、ルノーの経営権を消滅させてしまうという選択肢も残されているが、こうした敵対的な手法は現実には選択しにくいだろう。
日産の独立性が担保できるよう、細かい資本構成や人事などの面で、地道に交渉していくしか方法はなさそうだ。
日本は先進国の中ではもっとも市場が閉鎖的で、外国資本による直接投資が極端に少ないという特徴がある。筆者自身は、国内市場をもっと開放した方がよいとの立場だが、外国資本の受け入れは慎重にすべきとの考え方も理解できなくはない。
だが日本の場合、普段は外資の参入に消極的でありながら、企業が経営危機に陥ると、すぐに外資に頼ってしまうという大きな問題がある。日産が経営危機に陥った際、日本国内のリスクマネーが日産を救済していれば、こうした事態には至らなかったはずだ。三菱自動車を救ったのも、結局はルノーだったという現実を忘れてはならないだろう。
電機業界ではシャープという事例もある。日本国内では中国資本に対する批判が根強いが、結局、シャープを救ったのはチャイナマネーであった(鴻海は台湾の企業だが、創業者のテリー・ゴー氏は外省人であり、中国本土で成長した企業なので限りなく中国資本に近い)。
日本人としては日産の独立性が維持されるよう祈るばかりだが、仮にルノーに完全統合されてしまったとしても、資本の論理上それはやむを得ないことである。