働きアリという名前が付いているぐらいなので、さぞかし働き者なのだろうと思いますが、実は、アリのコロニーには働かない働きアリがたくさんいます。

 アリのコロニーを観察してみると7割の働きアリは、目的もなくフラフラしている、自分の体を舐めている、動かないなど、働いていません。また、1カ月間継続的に観察したとしてもほとんど何もしない働きアリが2割もいます。極め付けは、生まれてから死ぬまでほとんど働かない働きアリもいるそうです。もはや、さぼりアリですね。

 その一方で、9割の時間は働いている働きアリも存在します。

違いは“腰の重さ”にあった!

 同じアリにもかかわらず、なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。

 アリは思考能力を持たないので、人間のように「バレなさそうだから手を抜いておこう」と考えているわけではなさそうです。北海道大学大学院農学研究院 准教授の長谷川英祐氏の研究によると、働くアリと働かないアリの違いは、ズバリ「腰の重さ」にあるそうです。例えば、餌が見つかったなどの特定の刺激に対して、反応しやすい(腰が軽い)、しにくい(腰が重い)、という違いをアリは遺伝的に持っているのです。これを専門的には「反応閾値(はんのういきち)」と呼んでいます。

 アリの前に何らかの仕事が現れた時には、まず最も反応閾値が低い(腰が軽い)アリが動き、次の仕事が現れた時には次に閾値が低いアリが動くというかたちで仕事の分担がなされています。そのため、一定量以上仕事が増えないかぎり、閾値が高い(腰が重い)アリはいつまでたってもふらふらしたり、自分の体を舐めていたりしているということが起きているのです。