HRテクノロジーの活用によって、どのような企業像を目指すのか。

 ここ数年、我が国でも「HRテクノロジー(人事テクノロジー)」への関心が高まっている。

 HRテクノロジーとは、AI、IoT、ビッグデータなどを活用して、人事業務の効率化や採用・人材育成・評価・配置・登用などをより科学的に行うための技術である。

 たとえば、AIを活用して書類選考を自動化する、勤怠データや人事考課の履歴などを活用して退職可能性を予測するなどといった技術は、既に国内先進企業でも取り入れられ、成果を上げつつある。HRテクノロジーは、Fintech(金融テクノロジー)やAdtech(広告テクノロジー)に続くテクノロジー活用の領域として期待されているのだ。

 しかし、直近で見ると、実は日本におけるHRテクノロジーへの関心は停滞している。デロイト・トーマツ・コンサルティングが行った調査*1によれば、2016年にHRテクノロジーに関心を持っていた日本企業は81%あったが、2017年の調査では、77%と4%下落している。

 人手不足が慢性化する中、人事部門でもテクノロジーを活用する必要性は理解できるし、関心がないわけではない。しかし、テクノロジーを活用することで、何がどう変わるのかがよく分からない。日本企業の多くは、そういった疑問を拭えないため、HRテクノロジーの導入に踏み切れないのではないだろうか。

 私は、この疑問を人材マネジメント分野の研究者と人事の実務家の双方に、率直にぶつけてみた。質問をぶつけた研究者とは、人材マネジメント領域における世界的なオピニオンリーダーであるシカゴ大学のデイブ・ウルリッチ教授。実務家は、日本で既にHRテクノロジーを活用している先進企業の人事部門で働く、エンジニアリングやデータサイエンスのバックグラウンドを持つ人事パーソンたちだ。