「家族のかたち」は自由度の高いパズル型へ

 これからの環境変化は「はたらく」を大きく変えていく。最も楽観的な立場ですら、人の仕事の多くがテクノロジーに代替され、沢山の人が学び直し、新しく生み出される仕事に移行する可能性を否定しない。世界的な競争の激化も加わって、100年と言われる長い人生を1つの企業が支え続けることは一層難しくなり、転職や独立・起業というトランジションを人生で何度も経験することは当たり前になる。

 さらに人生100年と言われる長寿化や兄弟姉妹数の減少により、人生のどこかで育児、介護、自分や家族の病気治療と向き合いながら働く可能性は、誰にとっても否定しがたくなっている。

 このような状況では、「稼ぐ」「ケアする」といった役割を、特定の人にリンクする戦略は不安定だ。特定の人に「稼ぐ」役割を固定した場合、学び直しの期間、転職や独立・起業に失敗した時、病気治療の時などに、家族の生活基盤が根本から揺らいでしまう。

 これからの時代には特定の人に役割を固定せず、「いつ」「誰が」「どんな」役割を担うのかを見直し続けることが必要になる。それは自由度の高い組み立てパズルのように、「家族が自分達にとってふさわしい役割分担のあり方をその都度作る」という“家族役割4.0”である(図表2)。

図表2 家族のかたちのバージョンアップ
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 日本にとっての難しさは、「夫も妻も働き、夫も妻も家族のケアを担う」という家族役割3.0を社会としてきちんと実現しないまま、より複雑な調整を必要とする次の家族のかたち(家族役割4.0)へ移行していかなければならない点にある。国として、そして個人として、変化の大きい時代に適した家族のかたちをどう実現していくのか、考えるべき時に来ているのではないだろうか。