まさに「トランプ氏に乗っ取られた共和党の保守本流の苛立ちと憤りが代弁されている」(共和党保守本流の下院議員の1人)と言っていいかもしれない。
「トランプは口数の多い自惚れ屋のエゴイスト」
本書で引用されているブッシュ父子の発言を箇条書きにすると以下のようになる。
一、ブッシュ(父)「トランプは一般大衆の不満や憤りを煽り立てて大統領になった男だが、大統領が何かを全く理解しないままに大統領になってしまった」
二、ブッシュ(父)「共和党の伝統的政治スタンスは、貿易や移民での国境を取り除き、民主主義と市民社会を世界に拡散し、強固なアメリカのリーダーシップを発揮させることにある。トランプはそのすべてに逆行させる政治を行おうとしている」
三、ブッシュ(父)「私はトランプについてそれほど知っているわけではない。しかしトランプが『口数の多い自惚れ(うぬぼれ)屋』であることはよく分かる。トランプには何も期待していない。自分のエゴでしか行動しない男だ。(2016年の大統領選挙には)私はヒラリー・クリントン(元国務長官)に票を入れた」
四、ブッシュ(子)「トランプが『俺にはアドバイザーなんかいらない。俺自身が唯一のアドバイザーだからだ』というのを聞いて、私はこの男は大統領職が何であるかを全く理解していないと思った。この男には『謙譲の美徳』(Humility)が完全に欠落していることが分かった。ブッシュ家には先祖伝来受け継いできた遺産がある。私たちはそれを大切にしてきた。それがトランプにはない」
ブッシュ父子のトランプ氏に対する批判の背景には、2016年大統領選の際にブッシュ父にとっては次男、ブッシュ子にとっては弟のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が出馬し、予備選途中で離脱した経緯がある。
予備選の最中にはジェブ氏はトランプ氏から兄のイラク侵攻について口汚く罵られた。その恨みつらみが父子に皆無とは言えない。