「言葉の戦争」が「軍事衝突」になる日
激しい言葉の応酬が続いている。一方が「子供じみたロケットマン*1」と茶化せば、一方は「おじけづいた犬」とやり返す。「言葉による戦争」はエスカレートしている。
*1=ロケットマンは、1972年のエルトン・ジョンのヒット曲。火星を目指して飛ぶ宇宙飛行士だが、帰還しても英雄扱いされないという話。
「言葉」がいつ「軍事衝突」になるか。
米国のドナルド・トランプ大統領は「炎と激怒」(Fire and Fury)で北朝鮮の完全破壊も辞さぬ姿勢を打ち出している。かたや金正恩委員長も一歩も引かぬ。
まさに傍から見ると、「幼稚園の子供同士の喧嘩」(ラブロフ露外相)だが、これが続けば、次に何が起こるか分からない状況が続いている。
トランプ大統領は、「軍事的選択肢にもいくつかある」と言明しているが、手の内は明かしていない。北朝鮮の「レッドライン」(越えてはならない一線)がどこにあるのか。米領グアムへの弾道ミサイル発射か、太平洋上での水爆実験か。
ところが米国内でも国外でも「トランプ大統領は北朝鮮を完全に破壊する軍事攻撃には踏み切らないだろう」といったある種の「まさか」感がある。「北朝鮮もそこまでは米国を挑発しないだろう」との「楽観論」と表裏の話だ。
米国が北朝鮮の核・ミサイル施設だけを攻撃する「サージカル・アタック」ですらできないとの説もある。ましてや「斬首作戦」(金委員長暗殺工作)はさらに厳しい。
攻撃を仕かければ、北朝鮮の報復攻撃を受けて、米国の同盟国である韓国、日本が甚大な被害を受ける、だからやらない、という自信に満ちた(?)理由づけが日韓の常識的軍事専門家の間には根強い。
その理由はさておき、米国が北朝鮮を攻撃できない最大の理由はほかにあるらしい。