大手出版社の契約解消で自費出版
「ニューヨーク・タイムズ、ヒラリー(クリントン元国務長官)、共和党保守本流――。奴らは一般大衆の敵だ」。
今米国の若者たちの間で圧倒的な人気を博している英国籍の扇動者、ミロ・イアノポウロス氏(32)の本がついに出た。一種の自叙伝だ。
同氏は、英国ケント市から米国に渡り住み、保守系オンライン・メディア「ブライトバート」編集長を歴任。既成の保守主義にとって代わる「オルト・ライト」(オルタナ右翼)の正当性を発信し続けるミレニアム世代の鬼才だ。
本書は、本当なら今年3月に出るはずだった。
ところが契約(25万ドル=約2800万円)を結んでいた大手出版社サイモン・シュースターが急遽、契約を解消してしまった。人権団体などからの圧力に尻込みしたとされている。
理由は、イアノポウロス氏がこれまで発信してきた白人優越主義、人種差別、女性蔑視、そしてロリコン(ロリータ・コンプレックス=少女に対する性的嗜好)常習者擁護・・・に対する激しい反発だった。大手出版社がなぜ、そんな人物の本を出すのか、という抗議だった。
そしてイアノポウロス氏は7月、自費出版に踏み切った。
アマゾン・ドット・コムが本書を扱ったところ、印刷本、eブックともにかなりの売れ行きだという。発売と同時にニューヨーク・タイムズはじめ主要メディアが書評を掲載、ベストセラー・リストの上位につけている。
ツィッターは反社会的理由で永久追放
イアノポウロス氏、32歳。英ケント市生まれ。マンチェスター大学を経てオックスフォード大学に進むが中退している。
英テレグラフ紙のテクノロジー担当記者を経て2011年、友人とともにオンライン・メディア「ザ・カーネル」を立ち上げた。
イアノポウロス氏が最初に手がけた特ダネは、2014年起こった「ゲーマーゲート」*1騒動だった。
*1=女性向けゲーム開発者の女性にフラれた元カレが腹いせにプライベートな画像を流出、ネットやゲーム業界における人間模様が浮き彫りにした事件として欧米で大きく報じられた。