パリ協定、離脱・残留めぐるトランプ政権内の亀裂 イヴァンカ氏も姿なし

米ホワイトハウスのローズガーデンで、ドナルド・トランプ大統領(フレーム外)のパリ協定離脱の決意表明の場に出席したスティーブ・バノン首席戦略官・上級顧問(左から2人目、2017年6月1日撮影)。(c)AFP/Brendan Smialowski〔AFPBB News

まずクシュナー、上下両院情報特別委の公聴会へ

 ドナルド・トランプ米大統領は就任から半年となったが、選挙中に公約したアジェンダで実現したのは環太平洋経済提携協定(TPP)と地球温暖化防止の「パリ協定」からの脱退のみ。

 医療保険制度(オバマケア)の見直し、中東諸国から渡航者入国禁止、メキシコ国境壁建設などは議会・裁判所の反対で大きな壁にぶつかっている。問題は、それだけではない。

 選挙中からのトランプ陣営とロシアとの関係をめぐって生じている暗雲が「トランプ・ホワイトハウス」の上に立ち込めているからだ。ロバート・モラー特別検察官による捜査も現在進行中だ。議会各委員会の真相究明も本格化している。

 米議会は7月24日には「ロシアゲート」疑惑の渦中の人、娘婿のジャレド・クシュナー大統領上級顧問、26日には長男のドナルド・トランプ・ジュニアらを召喚する。ジュニアはその後、先送りを申し出、公聴会出席は先延ばしされた。

 その中で、大統領側近で唯一「ロシアゲート」疑惑に全く関与していないとされる人物がいる。首席戦略官のスティーブ・バノン氏(63)だ。

 その無精でだらしない怪異的(?)風貌とも相まってバノン氏は、「ホワイトハウスの怪僧ラスプーチン」とも呼ばれている。ラスプーチンとは、ロマノフ王朝を操り、滅ぼしたロシアの神秘主義的修道士だ。

トランプとバノンが交わした「悪魔の契約」

 そのバノン氏とトランプ大統領との「共生関係」を内幕的エピソードをふんだんに盛り込んで描いた本が出た。

 "Devil's Bargain: Steve Bannon, Donald Trump, and the Storming of the Presidency" (悪魔の契約:バノンとトランプ、そして暴風吹き荒れるホワイトハウス)

 著者は、「プルムバーグ・ビジネスウィーク」のベテラン政治記者、ジョシュア・グリーン氏。これまで「ボストン・グローブ」「ワシントン・マンスリー」「アトランティック誌」などの編集デスクやコラムニストを歴任してきた。

 グリーン氏は、バノン氏がトランプ陣営に参加する前から面識があり、何度かインタビューもしてきた。政権入り後もマスコミ嫌いなバノン氏が心を許す数少ないジャーナリストの1人だ。