トランプ氏、大統領令でオバマケアの規制緩和 法案めど立たず

米ホワイトハウスで医療保険制度改革法(通称オバマケア)の規制を緩和する大統領令を見せるドナルド・トランプ大統領(2017年10月12日撮影)。(c)AFP/Mandel NGAN 〔AFPBB News

1.米国におけるトランプ政権の特殊な状況

 米国のドナルド・トランプ政権発足から約9か月が経過した。この間、スティーブ・バノン首席戦略官、ラインス・プリーバス首席補佐官ら政権中枢の重要ポストにあった人々が辞任し、政権の顔ぶれはかなり変化した。

 しかし、トランプ政権の政策運営の混乱ぶりには改善が見られていない。

 政権発足から半年間程度は助走期間として、政策運営上の不適切な対応はある程度やむを得ないと考えられていた。

 しかし、すでに9か月が経過し、政権中枢の顔ぶれも大きく入れ替わったにもかかわらず、政策運営は発足当初と変わらぬ混乱ぶりを呈し続けている。こうした状況は過去に例がないと米国の大多数の有識者は頭を抱えている。

 それにもかかわらず、トランプ大統領の支持率は30%台後半から40%前後で安定している。政策運営に対する有識者の憂慮が一段と深まっているにもかかわらず大統領の支持率は安定的に推移しているという乖離現象は米国が直面している問題の難しさを物語っている。

 元々反エスタブリッシュメントの色彩が濃いトランプ大統領が選ばれた背景には、1980年代以降、米国経済が成長したにもかかわらず、その果実は所得階層最上位の人々だけが享受し、中間層以下の人々の収入はほとんど上昇していないことに対する強い不満がある。

 最上位3%の富裕層が所得全体に占める割合は1989年の44.8%から2013年の54.4%へと上昇した(FRB米国連邦準備制度理事会調べ)。

 こうした状況が長期にわたって改善されてこなかったことに対して、米国一般庶民は政策運営を主導してきたワシントンDCの政治家、役人、学者、有識者や彼らを支えたウォールストリートの金融界のリーダーなどに強い不満を抱いている。

 こうした所得格差の拡大に対する不満を背景とするエスタブリッシュメントへの反感が続く状況下では、トランプ政権が非常識な政策運営を行っても、エスタブリッシュメント層を敵に回して戦う姿勢を示し続ける限り、米国内では一般庶民から安定的に支持される可能性が十分ある。

 その政策運営の副作用は米国内にとどまらず、全世界にも大きな影響を及ぼすことになる。