仕事を通じて何を得たいのか?

 次のワークは、ペアの片方が抱える「課題」を、もう1人が「やりたいこと」に言い換えるというもの。たとえば、Aさんが「残業が多い」と述べたら、Bさんは「それは“早く帰りたい”ということですね」と置き換える。それを、立場を交換しながら、何度も繰り返すのだ。

 数分のペアワークを終えると、参加者の表情がだいぶ和らいでいるようだった。

「頭の中でぐるぐる回っていたネガティブなことを、相手がポジティブに返してくれると、ああそうか、これもできると、アクションにつながる勇気が出てきます。それほど悪くなかった、これがほしいだけだったと、考えられるんですね。これは、心理的安全性の状態です」

 最後のワークは、仕事のモチベーションに気づかせる質問だ。これもペアを組んで、相手に以下のような質問をしていく。たとえば、

・あなたは仕事を通じて何を得たいのか。
・どうしてそれを得ることが大切なのか。
・何をもって“いい仕事をした”と言えるのか。
・あなたの一番の強みは何だろうか。
 

など。少し身構えてしまいそうな質問が並ぶが、先ほどのワークで相手との距離が近づいているからか、みな思うことをどんどん口にしていく。

「自分の役割や肩書きにこだわってしまう人は、根本的に成功しません。成功する人たちを見ていると、パッション、ビジョン、ミッションが強い人です。何をやろうとしているかだけではなくて、どんな人であろうとしているか、振り返っています」

 さらに、成功の鍵は自分の内面だけにあるのではないという。

「周りにどんなサポーターが必要というのを分かっているのです。同僚とか、家族でもいいですが、周りの人が自分の価値を高めてくれているというのは、非常に大事ですね」

 ピョートル氏は、ワークショップの締めくくりとして、こうまとめた。

「僕にとっては、仕事は他人に“価値”を提供すること。その価値が受け入れられて、価値として評価されて感謝されれば、それが理想的な仕事だと思うのです」

 自分にしか出せない価値を、自分のありのままの姿勢で発揮できる。中には理想論だと思う方もいるだろうが、それでも、少しずつ変えていけるところはあるはずだ。

 自分にとっての仕事とは何か、それをどのように実現していくのか。自分の根本を問い直すのが、働き方改革の一番の近道かもしれない。