米国が数年先と見ていた北朝鮮の核弾頭付大陸間弾道ミサイル(ICBM)の展開が予想を超えて早まるとみられる。
そのため制裁問題を含め、国際社会の緊迫度は高まり、9月3日の核実験後は制裁強化が従来に比して迅速に決議された。しかし、抜け穴だらけとも言われ、北朝鮮は核兵器の保有とICBMの完成・配備に邁進するに違いない。
米国は北朝鮮が核弾頭の小型化や大気圏再突入のような高度な技術の習得が易々とできるはずがないと見ていた節があった。
ソ連などが短期間に核保有国になったように、後発国になるにつれて技術の習得が容易かつ低コストになるという経験則を米国は忘れていたのだろうか。
それとも白人至上主義者の存在で分かったように、米国に伏在する差別意識から北朝鮮を甘く見くびっていたのだろうか。
北朝鮮は昨年に行った核実験やミサイル発射試験で飛翔能力や命中精度に自信を持ち、金正恩朝鮮労働党委員長は今年1月1日の年頭挨拶で成果を誇示するまでに至っていた。
金委員長の年頭の辞
ここ数年、中国の南シナ海の人工島造成問題がアジアの焦点であった。その間、北朝鮮のミサイル発射などに大きな焦点が当てられることは少なかった。
そうした中で、米国の大統領予備選挙の2016年はバラク・オバマ大統領が打ち出した「戦略的忍耐」に加えてレームダック時期でもあった。
米国をはじめとした国際社会から記憶に残るような批判にさらされることもなく、核実験を2回(1月6日、9月9日)、またスカッドER、ノドン、ムスダン、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、その他の各種中長距離ミサイル発射を数多く繰り返した。
金正恩委員長が今年の年頭挨拶で、「国防力強化で画期的な転換が行われ、わが祖国はいかなる強敵も攻撃できない東方の核強国、軍事強国」となり、「戦略的地位を一段と高めた」と自賛したが、これは2016年の成果を踏まえてのことであった。
また、「米国本土に到達可能な大陸間弾道ミサイルの試射準備が最終段階に達した」と述べたのは、今後の予告をしたに等しかった。
現に3月6日に行った同時4発発射のミサイルは、南北にほぼ80キロの等間隔で落下し、命中精度の向上を確認し、5月以降はロフテッド軌道で高高度(5月14日2111キロ、7月4日2802キロ、7月28日3724キロ)に打ち上げ、弾頭の再突入技術の確立と飛翔距離の増大を図るなど、ICBMへの道を確実に進めていったと言える。
金委員長の元日の発言に対し、ドナルド・トランプ大統領は翌2日に反応し「北朝鮮はつい先ほど、米国の一部に到達できる核兵器の開発の最終段階に入っていると発表したが、そうはならない!」とツイートした。