私は企業の経営を心理的側面から分析して経営改善を行う経営心理士として、経営コンサルティングを行っている。その中で多くの経営者から、「若手社員は欲がなく、強いやる気が感じられない。どうやって彼らの心に火をつけたらいいのかが分からない」という相談が寄せられる。
こういったこともあり、私は20代の人たちに会うと、給料や出世についてどのように考えているかについて聞くようにしている。
また、大学で講演をさせていただくこともあり、講演後は学生との懇親の場を設けてもらうようにしているが、そこでも同様のことを聞いている。
その答えとして大勢を占めるのが、「そんなに稼ぎたいとも思わないし、出世したいとも思わない」という答えである。
稼ぎたい、出世したい人は少数派に
もちろん中には「バリバリ稼ぎたいし、出世もしたい」と答える人もいるが、その意見は少数と言わざるを得ない。
そのため、大学生や20代の社会人に関して言えば、稼ぎたい、出世したいという欲は決して強くはないと感じている。
この世代の人たちの多くは1990年代生まれとなるが、この世代の人たちのことを「さとり世代」と呼んだりもする。さとり世代の特徴として一般的に「欲がない」や「恋愛に興味がない」といったことが挙げられている。
では、そのことをもって「彼らは欲がない」と言い切っていいのかというと、私は決してそうは思わない。私は彼らとのやり取りの中で、物欲や出世欲以外の欲を持っていると感じている。
それは「人や社会の役に立つ仕事をしたい」という欲である。
こういう言葉を聞くと、「綺麗ごと」のように感じるかもしれないが、この世代の人たちはそれを単なる「綺麗ごと」とは捉えない純粋さのようなものを感じる。