私は企業の経営を心理的側面から分析して経営改善を行う経営心理士として、経営コンサルティングを中心に活動している。これまでに数百件の経営相談を受けてきたが、経営相談を受ける中で経営やビジネスにおけるいくつかの成功・失敗に関する法則性が見えてくる。
失敗に関する法則性の1つに、プレイヤーとして突出した能力を持った人間がマネジャーになると部下の可能性を潰してしまうというケースがある。
もちろんこのタイプの人でも部下をきちんと成長させることができている人もいる。ただ、このタイプの上司に悲鳴を上げる部下を多く見てきた。
名プレイヤー必ずしも名監督ならず
スポーツの世界でも名プレイヤーが名監督になれるとは限らないように、ビジネスの世界でも名プレイヤーが必ずしも優れたマネジャーになるとは限らない。というのもプレイヤーに求められる役割とマネジャーに求められる役割は異なるからだ。
プレイヤーの役割は、自らが動き、自らが高いパフォーマンスを発揮することである。一方、マネジャーの役割は、プレイヤーを動かし、プレイヤーに高いパフォーマンスを発揮させることである。
そのため、マネジャーは自分がスポットライトを浴びようとするのではなく、部下にスポットライトを当てるような動き方をすることが求められる。
人間がモチベーション高く、自発的に動き、高いパフォーマンスを発揮する時とは、自分の意見や仕事ぶりが認められ、成長を実感して自信を持つことができ、そして自由を与えられた時である。
逆に、人間のモチベーションを下げ、自発性を損なわせ、パフォーマンスを下げるためには、相手の意見や仕事ぶりを否定し、自信を失わせ、そして自由を奪えばよい。
マネジャーには部下が前者のような状態になるように関わることが求められる。しかし、プレイヤーとして優秀な上司は、悪気はないものの、結果として後者のような関わり方をしていることが少なくない。