私は公認会計士、心理カウンセラーとして経営の相談を受けている。心理カウンセラーという肩書きがあるため、通常の経営相談にはないような相談を受けることも少なくない。
ある社長からこんな相談を受けたことがある。20代前半で起業し、そこから寝る間も惜しんで働いて、今ではほとんど何もしなくても毎月数百万円の収入が入ってくる仕組み作った。
毎日、あくせく働くこともなく、好きな時間に起き、好きな物を食べ、好きな車に乗って、好きな家に住む。海外の国々を次から次へと回り、行きたいところには行こうと思えば行ける。
夜な夜なパーティや飲み会に出かけ、飲んで楽しく騒ぐ。そういう生活を1年ほど続けている。そんな現状を説明された後、こう話された。
「生きている意味が感じられない」
「今、生きている意味が感じられないんです。ぶっちゃけ、死にたいです」
実はこういった相談は少なくない。これまでに何件もよく似た話を聞いている。社長というのはビジネスのやり方によってはあり余るほどの収入と時間を手にするようになることがある。
「仕事をする目的、それは収入を得ること」
そういった価値観のもとに仕事をしていると、仕事をしなくても十分な収入が手に入るようになると仕事をする必要性を感じなくなり、そして仕事をしなくなる。一見すると憧れるような状況かもしれない。
しかし、そういった状況が1年も続くと鬱っぽい症状になる人もいる。なぜそんなことになってしまうのか。その原因の1つとして、貢献欲求が満たされていないということが挙げられる。
人は他者や社会の役に立っているという貢献感を得たいという欲求を持っている。この欲求を貢献欲求と呼んでいる。人は誰かの役に立っていることを実感することで、自らに価値を感じることができるという性質を持っている。