自分が話す。相手の話を聞く。
あなたは部下との会話のスタンスとして、どちらを優先しがちだろうか。
人は、自分の気持ちや感情を分かってもらいたい、自分の考えや意見を分かってもらいたい、何かを伝えたいといった欲求を持っている。そして、会話をすることによってそういった欲求を満たすための機会を得る。
その欲求に余裕のある人は、相手にその機会を譲ることができ、自ら聞く側に回ることができる。しかし、抑えきれないほどにその欲求が強い人、その欲求に関して欲求不満の状態にある人は、その機会を相手に譲る余裕はなく、自分が話すことを優先しようとする。
奪うか譲るかで成長に大きな差
会話をする際には、人はこういった欲求を抱いており、その欲求を満たす機会を相手から奪う人、あるいは相手に譲ることができる人がいる。上司がいずれのタイプかによって、部下のパフォーマンスや成長の可能性は大きく変わる。
私は公認会計士、心理カウンセラーとして経営コンサルティングの仕事をしている。この仕事を通じて経営やビジネスの現場を見る中で、聞く力を持ったリーダーの存在の重要性をつくづく感じる。
組織のメンバーたちは、先に述べた欲求を持っている。そして、人は欲求が満たされると、エネルギーやモチベーションが上がる。
そのため、組織のメンバーの話を聞き、こういった欲求を満たすことができる人がリーダーだと、その組織のメンバーのエネルギーやモチベーションは上がっていく。実際、私はそういった事例をいくつも見てきた。
部下と2人で飲みに行って、じっくり部下の話を聞く。いろいろな部下に対してそういった関わり方をしている取締役の方がいる。
普段、飲む機会がないような部下を飲みに誘うと、部下は委縮して構える。そんな時はまず自分の弱みを見せるような話から始める。会社では厳格な雰囲気の上司かもしれないが、趣味のゴルフではひどいスコアで皆にからかわれている。
家に帰れば奥さんが恐くて戦々恐々としている。若い頃には仕事でこんな失敗をして、上司にこっぴどく叱られた。
そんな話をすると、部下も親近感を感じ、ふっと打ち解けた雰囲気になる。それから、「仕事はどうですか?」と投げかける。そこから部下の話を共感とともに丁寧に聞く。話のタイミングを見て質問し、部下の話を深掘りしていく。