私は公認会計士であるとともに、企業の経営を心理的側面から分析して経営改善を行う経営心理士として、経営コンサルティングを行っている。
今、「生産性」という言葉が話題となっており、生産性向上のカギを握るのは何かという議論が盛んに行われているが、その1つとして、私は「機嫌」が挙げられると感じている。
「うちの上司は機嫌が良い時と悪い時の差が激しいんです。機嫌が悪い時はとても話しかけられないので、上司に聞けばすぐ分かるようなことでも自分で何時間もかけて調べることもあります」
「最近、新しい人が中途で入ってきたんですが、その人はいつもイライラしているので、チームの雰囲気が悪くなったんですよね。チームの雰囲気が悪くなると同じ仕事をしていてもホント疲れます」
機嫌の良し悪しが生産性を変える
こういった愚痴を聞くことは珍しくない。このように機嫌の良し悪しは仕事の生産性に影響を与えている。
人は他者の機嫌に敏感に反応する。この連載の中でも何度かご紹介しているが、人間の感情は無意識のうちに他者に伝染するという性質を持っている。これを「情動伝染」という。
そのため、チームの中に1人でも機嫌の悪い人間がいると、同じチームの人たちはその感情が無意識的に伝染し、ストレスを感じるようになる。その結果、そのチームの生産性に影響を及ぼすようになる。
実際、ご自身も過去にそういった経験をしたことはあるのではないだろうか。
「機嫌は悪くても、別に人に迷惑かけているわけじゃないから問題ないでしょ」
機嫌が悪いまま仕事をしている人は無意識的にそんな風に思っているかもしれない。しかし、情動伝染の影響を考えると、機嫌が悪いだけで十分に人に迷惑をかけているのだ。
機嫌良くしている。
これはチームの生産性を下げないための最低限の貢献であると言える。また、立場が上の者から立場が下の者に対する情動伝染の影響は特に大きい。