(文:小泉悠)
前回の拙稿(2017年5月24日「ロシアの『新ネット規制』標的は『メッセージサービス』」)では、ロシア政府がSNSやメッセンジャーサービスを標的としてネット監視を強化している状況を紹介した。インターネット統制を進めたいロシア政府は、ロシア人ユーザーに関する個人情報をロシア国内のサーバーに保存するよう国内外のネット企業に求めており、応じない一部企業に対してはアクセスをブロックするなどの措置に出ているというものである。
なかでもメッセンジャーサービスの『Telegram』はロシア政府による新たな標的ではないかと書いたが、その後、まさにこのとおりの事態が発生しているので紹介しておこう(本来、今回はネット規制を進めるロシア政府の思惑について紹介する予定でいたが、Telegramをめぐる情勢に動きがあったのでこちらを優先し、ロシア政府の思惑については次回とする)。
前回紹介したように、Telegramの創設者であるドゥーロフ兄弟は、ユーザー情報をロシア国内のサーバーに移すことを拒否し、抗戦の構えを見せていた。
これに対して、ロシアの連邦通信マスコミ監督庁(ロスコムナゾール)がTelegram社に本格的な圧力を掛け始めたという情報が、5月半ばごろから一部マスコミで出回り始めた。
有力紙『ヴェードモスチ』によると、これはTelegram社がロシアの通信事業者としての認定を受けるか、さもなくばアクセスを遮断されるかの二者択一を迫るものであったという(同紙はロスコムナゾールからTelegramに送られた書簡のコピーを入手したとしている)。
Telegram社はドイツを本拠とし、ユーザーもインターネットでアプリケーションをダウンロードして利用するため、これまでは正式にロシアの通信事業者として登録されていなかった。
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