3月24日には、日本政府が、外為法を持ち出してきた。これは、高値で応札することが予想される中国と台湾を排除するために、日本政府が考え出した奇策であろう(愚策とも言う)。
4月1日に東芝メモリが設立されると、台湾マクロニクスが「東芝メモリのNANDが特許侵害をしている」と訴えてきた。これは明らかに不自然である。というのは、東芝メモリとWDは、共同でNANDを開発し、製造しており、そのNANDの構造はまったく同じであり、製造プロセスも同一のものだからだ。それなのに、マクロニクスはWDを訴えずに、東芝メモリだけを訴えたのだ。これは明らかに、「東芝メモリのNAND技術には問題がありますよ」と言うことを喧伝し、それによって東芝メモリの買収額の引き下げを狙ったものと思われる。
なお、マクロニクスは台湾企業であるが、経営陣には米スタンフォード大学、米コロンビア大学、米カリフォルニア大学バークレー校、米ミシガン大学などの出身者がずらりと並び、米国との繋がりが極めて深い。つまり、東芝メモリへの特許訴訟は、米政府からの要請で行った可能性が高い。
そして、このように外堀が埋まった段階で、4月9日にWDが契約を盾にして「他社への売却を認めない」と言い出したわけだ。
結局、3月17日に行われた世耕弘成経産相と米商務省長官およびエネルギー省長官との会談で、米政府に弱みを握られている日本が圧力をかけられ、WDが東芝メモリを買収しやすいように、便宜をはかったと推測される。
政府も革新機構も大嘘つきだ
元々、経済産業省も産業革新機構も、東芝を支援する動きはまったく見せていなかった。
1月20日に、米WHの損失額が最大7000億円となる可能性が大きくなり、2017年3月期に東芝が債務超過に陥ることは避けられない事態になったが、世耕経産相は、閣議後の会見で「経産省として支援策など対応を検討していない」と述べた(ロイター)。
3月8日に、世耕経産相は衆院経済産業委員会で、民進党の近藤洋介衆院議員に、東芝に対する産業革新機構の関与を問われ、「一般論だが革新機構は『企業救済機構』ではない」と述べて否定的な考えを示した(日経新聞)。