2016年8月にシャープを買収し一躍時の人となった台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者、郭台銘(テリー・ゴウ)会長。経営危機に陥った東芝の半導体事業への出資も「真剣に検討している」と述べ、その一挙手一投足にさらなる注目が集まっている(3月1日付「日本経済新聞」)。
鴻海はEMS(電子機器受託製造)の世界最大手である。だが郭氏はめったにメディアに登場することがなく、特に日本では郭氏の“正体”に関する情報がほとんどなかった。
今や世界で100万人以上の従業員を擁する巨大グループを一代で築き上げ、日本の電子機器業界に「進駐」してきた郭台銘とは一体いかなる人物なのか?
『野心 郭台銘伝』(プレジデント社)は、ノンフィクション作家の安田峰俊氏が丁寧な取材で鴻海の奇跡的な成長の秘密や郭氏の人物像を描き出した一冊だ。
著者は郭氏の生地に足を運んで生い立ちをたどったり、鴻海グループに会社を買収されて苦汁をなめた経営者、過酷な労働を強いられている社員などへのインタビューを織り交ぜ、郭氏の経営者としての実力や人となりに迫っている。
なお、著者の安田氏はかつて鴻海グループの「フォックスコン」に部品を納める会社で働いたことがあり、鴻海の社風を肌で感じた経験の持ち主である。