WD傘下になったサンディスクは、2000年から東芝とNANDを共同で開発し、製造してきたメモリメーカーである。サンディスクと東芝は、設備投資を折半し、開発や製造の技術者もほぼ同数在籍させて、共存共栄の関係を築いてきた。それゆえ、WD(サンディスク)と東芝が「もはや離婚できない関係」であるということは理解できる。
しかしそれならば、東芝メモリが分社化し、売却されることが避けられない事態となった1月中旬に、それは違反であり認められないということを通告すべきであろう。それなのに、3月29日に1次入札が行われ、4月1日に東芝メモリが設立されるまで、何も言わなかったというのは理解しがたい態度である。いたずらに事態を混乱させているとしか思えないではないか。
そして、そのような行動をとった背後には、何らかの策略があると考えざるを得ない。その策略とは、どんなものか?
WDの決定的な弱点
冒頭で説明したように、WDの問題は、独占禁止法に抵触することと、資金不足であることである。
2016年第4四半期のNANDの売上高シェアでは、WDは3位(17.7%)、東芝は2位(18.3%)で、合計すると36.0%となり、1位のサムスン電子(37.1%)とほぼ並ぶ。したがって、WDが東芝メモリを買収する場合は、各国司法省の審査を受ける必要がある。すると、例えば韓国あたりが「No」を突きつけるかもしれない。
そして、これよりも深刻なのが、資金不足の問題である。何しろ、2016年に約190億ドルでサンディスクを買収して、キャッシュをあらかた使い果たしてしまったからだ。
WDが東芝の取締役に送った意見書によれば、「2~3兆円の入札額は公正で支持可能な価格を大きく超えている」と主張している。それに加えて、東芝が「最低2兆円」とした事業価値も、「高い人件費や継続投資の必要性などを考えると公正な価格を大きく上回る」と言っている(日経新聞4月21日)。