韓国の大統領選挙の投票日(2016年5月9日)まであと1か月。主要政党の候補者が出揃った。
大本命は、野党第一党である「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)氏だったが、これを野党第2党の安哲秀(アン・チョルス=1962年生)氏が急追している。各種世論調査では、「逆転」という結果も相次いでいる。
「アゲイン2002か」。韓国では、こんな話を良く聞くようになった。
情勢が急変し始めたのは主要政党が大統領候補者を選出し始めた3月末から4月初め。つい1週間前のことだ。
情勢急変
筆者の周辺でも、大統領選で「だれに投票するのか?」がにわかに話題になり始めた。
「今回は安哲秀氏にする」
こんな話を急にあちこちで聞くようになった。
なるほど、確かに2002年の大統領選挙のときと似ている。
筆者はこれまで、1987年に制定された現行憲法下で実施することになった大統領直接選挙をソウルで4回見てきた。
2002年の大統領選挙は当初は「面白みのない選挙」だった。
その前(1997年)の選挙で保守系が分裂したことで惜敗した李会昌(イ・フェチャン=1935年生)氏が、1年以上も世論調査で圧倒的な首位を走っていた。
判事出身で金泳三政権では首相も歴任した。政策に明るく、とにかく頭脳明晰で清廉なイメージだった。
金大中(キム・デジュン)政権を舌鋒鋭く批判して、国政、地方の各種選挙では当時の野党を連戦連勝に導いた。「準備万端」だった。
大統領選挙の1か月前まで、「もう選挙戦は終わった」とさえ言われていた。