ソウル中心部にある大宇造船海洋本社

 韓国は大きなニュースが連日続いている。5月9日に控えた大統領選挙を前にした各党の候補者選び。朴槿恵(パク・クネ=1952年生)前大統領に対する逮捕請求。3年前に沈没して多数の死者を出したセウォル号の引き揚げ・・・。

 そんな中で、韓国を代表する大企業の処理問題が迷走し始めている。

 2017年3月23日、韓国政府は「産業競争力強化関係長官会議」を開いた。仰々しい名称の会議だが、この日の主題は、懸案になっている大宇造船海洋の再建問題について閣僚が協議することが目的だった。

大宇造船支援が主題

 会議終了後、政府は、大宇造船に対する大型支援策を発表した。「支援」とはいうが、営業や技術などで支援するわけではない。要は、金融機関に大規模金融支援をさせるという内容だった。

 まさに「大規模」だ。

 金融機関は、これまでの融資額のうち総額2兆9000億ウォン(1円=10ウォン)に相当する分を「出資転換」する。融資の回収をとりあえずはあきらめて大宇造船の株式に変えるということだ。

 さらに国策金融機関である韓国産業銀行(KDB)と韓国輸出入銀行は、新規に2兆9000億ウォンを融資する。

 あわせて5兆8000億ウォンに相当する金融支援だ。

 これだけでもかなりの額だが、実は、大宇造船に対しては2015年10月にも、KDBと輸銀が合わせて4兆2000億ウォンを「金融支援」している。わずか1年半でさらに巨額の金融支援をすることになってしまった。

 どうしてこんなことになったのか。

赤字が止まらない

 大宇造船の赤字が止まらないのだ。

 世界的な造船不況の直撃を受け、大宇造船の業績は惨憺たるありさまだ。ここ数年の営業赤字額はこうだ。

 2013年 7731億ウォン
 2014年 7429億ウォン
 2015年 2兆9372億ウォン
 2016年 5280億ウォン

 逆オイルショックの影響で受注は減少している。おまけに「造船不況対策」として積極的に拡大した「海洋プラント事業」も、発注先の産油国企業の経営不振で支払いが滞ったり、工事代金が当初の見積もりを上回って「赤字受注」になるなど、二重三重苦にあえいでいる。

 かつて「造船受注量世界一」に輝いたこともある企業だが、いまや文字通り「存亡の危機」なのだ。

 この「大宇造船」という企業はいったいどういう企業なのか。