サムスングループは2017年2月28日、「グループ本部」の役割を担ってきた「未来戦略室」を廃止し、「室長」である副会長など首脳陣9人が一斉に3月1日付で退社することを発表した。
これを機に「サムスングループ」という名称も使わず、グループ企業による独立経営に踏み出すという。いったい、どういう決断なのか。
「未来戦略室」。そもそもがおかしな組織だった。法的根拠はない。にもかかわらず、韓国最大最強のサムスングループの司令塔として絶大な権限を持っていたのだから。
法的根拠のない組織
この組織は、サムスングループのオーナー経営の象徴だった。
2014年5月から意識不明の状態にある李健熙(イ・ゴンヒ=1942年生)会長に代わって、事実上グループ総帥役になった長男の李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)サムスン電子副会長の直轄組織である。
「室長」は、サムスン電子のCEO(最高経営責任者)などを歴任した崔志成(チェ・チソン1951年生)氏。役職は「副会長」だ。「次長」も「社長級」だから、どんな組織なのかが分かるだろう。
「未来戦略室」には「戦略」「法務」「企画」「人事」「経営診断」「コミュニケーション」などの「チーム」があり、それぞれの「チーム長」は「社長」または、「副社長」が努めた。
今回、室長である副会長以下、ほとんどのチーム長が退社することになった。
未来戦略室は、グループ各社から優秀な人材を150人以上集めたエリート集団だ。サムスン電子などグループ企業にも、もちろん、「法務」「企画」「人事」などの部署はあるが、重要事項はすべて「未来戦略室」で決定してきた。
いったい何をしていたのか。「グループ経営で重要な業務すべて」を手がけてきた。
今回、廃止を決めたのは、朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領(職務権限停止中)を取り巻くスキャンダルで、「未来戦略室」にも批判の矛先が向いたためだ。
特別検察は、2月28日、逮捕していた李在鎔副会長を起訴した。
特別検察によると、李在鎔副会長は、自らの経営権承継を進めるために大統領にさまざまな請託をした。その見返りに、大統領の長年の知人である崔順実(チェ・スンシル)氏が設立や運営にかかわったとされる財団に資金巨拠出した。
さらに乗馬選手である崔順実氏の娘のために高額の馬を購入したり、訓練の支援をしたという。