サムスングループの事実上の総帥である李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)サムスン電子副会長が2017年2月17日未明、贈賄など5つの容疑で逮捕された。サムスングループのオーナー家の総帥が逮捕されて拘置所に入るのは、これが初めてだ。
「韓国経済はこれまで効率性を重視しすぎ公正性を看過してきた。大企業に社会的な責任を果たさせるために断固として法を執行する。有罪になってもすぐに釈放するようなことはしない」
サムスン総帥初の逮捕
財閥総帥に対する厳しい対応。こう主張したのは、2012年に大統領選挙に出馬した朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領(職務権限停止中)だった。
その朴槿恵大統領と周辺に対するスキャンダルの捜査で、創業以来初めて総帥が逮捕されることになってしまったのは、皮肉としか言いようがない。
逮捕の翌日の2月18日と19日、李在鎔副会長は、特別検察で取り調べを受けた。黒い背広にコート姿だが、手錠をかけられたまま大勢の記者が待ち構える中を建物の中に入っていった。
韓国最大最強の財閥の総帥が、手錠をかけられたまま記者たちの間を歩き、質問を浴びせられる。容疑者の人権はどうなっているのかと思わされもするが、これ以上ない屈辱のシーンだ。
2坪、1400ウォンの食事
李在鎔副会長はソウル郊外にあるソウル拘置所に入った。約2坪の個室。床暖房式で寒さはしのげる。1食1400ウォン(1円=10ウォン)の食事を済ませた後は、自分で食器を洗う。資産8兆ウォンといわれる李在鎔副会長にとって、これまでなら考えられない生活にショックも大きいはずだ。
どうしてこんな事態になってしまったのか。サムスングループと李在鎔副会長にとってはどうにもならない3つの大きな要因があった。
1つは、特別検察の任命、発足だ。
朴槿恵大統領と長年の知人である崔順実(チェ・スンシル=1956年生)氏を取り巻くスキャンダルが表面化して以来、サムスングループの立場は揺れ続けた。
サムスングループが崔順実氏が設立や運営に深く関与したとされる財団に資金を拠出したり、乗馬選手である崔順実氏の娘のために高額の馬を購入したりしたことが明らかになった後も、そうだった。
サムスングループは一貫して「不適切な行為はあったが、大統領から頼まれて断ることはできない」と被害者であることを繰り返し強調してきた。2016年11月まで捜査を手がけた検察も、この主張に強く反論する様子は見えなかった。
様相が一変したのは、一連のスキャンダルの捜査が特別検察に委ねられることになってからだ。