女性にはキャリア形成の変化に応じたサポートが必要

 図1、図2のグラフを見ていただければわかるように、実務担当者期において女性社員が「働く上で最も重視していたもの」は、「大変でもやりがいのある仕事をすること」(30.0%)であり、「できるだけ長く仕事を続けたい」と思う割合も男性社員よりも高い。

図1
図2

 だが一方で、「昇進・昇格のために必要な知識や技能を身につける機会をあたえてくれる上司がいる」については、男性社員の方が多くなる。

この結果を見ると、サマリにあるように、
①女性社員は働く意欲は高いが、キャリアを伸ばす機会が十分ではない

ということが明らかになる。

「実務担当者期における男女の仕事の質・量には、実はそれほど大きな違いは見られない。実務担当という第一のトランジションにおいては、男女ともに『自分の仕事をして成果を出す』というシンプルなミッションが与えられているため、それほどストレスや仕事の成果に差は出ない。この時期に大切なのは、上司が、女性社員の将来の昇進を見据えた指導を行う、という点に尽きる」(中原氏)。

ワーキングマザーの「働き続けたい」をどう支えるか

 しかし、女性社員の長期雇用のネックは、やはり出産・育児期間におけるブランクにある。女性の労働力率を表すいわゆる「M字カーブ」はここ数年で緩やかに改善されているものの、まだまだ出産・育児期間を境に、退職の道を選ぶ女性社員の数は少なくないのが現状だ。それだけに企業としても、女性にどこまで昇進・昇格のチャンスを与えればいいのか、そのタイミングについても迷うところだろう。

 だが今回の調査によると以下の表にあるように、ワーキングマザーこそが「今の職場で働き続けたい」と考えていることがわかる。

 この矛盾をどう是正するか。

 中原氏は「子育て女性の孤立」を理解し、抜本的な解決策を示すことが、多くの日本企業の根本的な問題解決にもつながるという。

「残業する人が評価される仕組みや、男性優遇の職場では、時間的にどうしても制限が出てくる子育て中の女性の立場はどんどん孤立していく。企業がどこまでその孤立を理解し、働きやすい職場環境を作り出せるかが課題」(中原氏)。

 女性が働きたいと望む職場環境について、調査では以下のような結論が出ている。

②女性が働き続けたいのは、平等、誠実で、残業見直しの雰囲気のある職場

 平等・誠実さについては先ほど述べた、昇進へのチャンスが与えられるかどうか。そして、残業見直しの雰囲気がある会社はまさにワーキングマザーの職場環境としては必須条件だ。

 だが育児中の女性社員のみが残業を免れるという「孤独な」特別待遇は、状況を変えられない。社員全員にとって残業量の見直しが行われ、効率の良い就労形態をとる改革がなされる「可能性と柔軟性」があるかどうか。これが優秀な女性社員を長く雇用することのキーワードとなる。そしてひいてはそれが、全社員に共通する「働きやすさ」を提供する生き残り企業の道につながるのである。

>>(下)に続く