女性の働き方改革で超少子高齢社会に突破口を
2016年、日本の出生数がついに100万人を割り、統計開始以降初めて98万人台にとどまった(※2016年12月22日厚生労働省発表)。この超少子高齢社会において経済の発展を維持していくには、政府が掲げる「働き方改革」の本格化が急務となる。この改革にはさまざまな切り口があるが、女性の活躍、とりわけ出産後に復職する女性の活躍が鍵になることは間違いない。
現状、日本人女性の労働力率を示すグラフは、結婚・出産期を境にいったん低下するM字カーブを描いている。多くの女性が、結婚・出産期に一度キャリアを手放しているということだ。だが、生涯にわたってキャリアを築き続けることを望む女性も、年々増えている。
今、そんな女性たちが注目しているのが、家事代行のシェアリングエコノミー「タスカジ」だ。自身も子育てをしながら、産後の女性たちが活躍できる社会を目指してタスカジを起業した和田幸子氏に、ワーキングマザーのリアルな姿と理想的な社会のあり方について聞いた。
共働き家庭を支えるハウスキーパーは「拡大家族」
平日の午後にオフィスを訪れると、すやすやと眠る赤ちゃんを抱いた女性スタッフが出迎えてくれた。柔らかな笑顔を見せる和田氏は、長男がインフルエンザに罹ってしまったため午前中は仕事を休み、午後は夫と交替して出社してきたのだという。
1999年富士通株式会社に入社し、システムエンジニアとしてERP製品の開発に従事。2005年、企業派遣制度にてMBAを取得した後、ERP製品のウェブプロモーション、中小企業向けクラウドサービスの事業立ち上げのプロジェクトリーダーを務める。2008年、第一子を出産後、フルタイム勤務で復職。2013年10月、自身の課題でもあった共働き家庭の「新しいライフスタイル」実現に必要な社会インフラを「ITを活用して作る」ため、富士通を退職。同年11月、ブランニュウスタイル(現・タスカジ)を設立。2014年7月、家事代行サービスマッチングプラットフォーム「タスカジ」をオープン
システムエンジニアとして富士通に勤務していた和田氏は、2008年に長男を出産後、育児休暇を経てフルタイム勤務で復職した。家事も育児も夫と半分ずつ。夫が自宅にいる夜は残業をすることもあったという。
「子どもが風邪をひいたときは苦労しましたね。最初の2年は、月に1回1週間くらい休まざるを得なくて。でも、短時間勤務を選ぶとキャリアアップのスピードが落ちる気がして、それで、なんとか頑張っていました」
夫との協力体制ができていたとはいえ、2人とも仕事優先。掃除や食事の支度には手が回らず、帰宅後は常に慌ただしくて子どもとゆっくり向き合う余裕もない。試行錯誤の末、和田家ではハウスキーパーと個人契約を結んだ。家事代行サービスを使うよりもリーズナブルだし、一対一の関係なので、長期にわたってパートナーシップを築くことができる。家事を発注するというよりも、家族が拡大したような感覚だったという。
「ああ、これだ! と思いました。誰もがリーズナブルに、そして思い立ったらすぐに、自分にぴったり合うハウスキーパーさんを見つけることができる。そんなシステムがないのであれば、私が作ればいいと思ったんです。それが起業のきっかけですね」