2015年8月女性活躍推進法が成立。2016年4月に施行され、アベノミクス下で女性の人材育成及びリーダー登用が推進されることになった。内閣府は「2020年までに女性管理職を30%に」という目標を具体的に掲げ、今や、女性社員をいかに有効的に活用できるか日本企業の大きな課題であり、飛躍のキーワードとも言える。
「女性の活躍推進」は企業にとって戸惑いの種
「女性にはもっと働きたい、活躍したいという思いがある。しかし企業側には、今以上にどうサポートをすれば良いかわからない、というジレンマがある」
代表取締役社長 眞崎大輔氏
と話すのは、10年にわたり人材開発事業に取り組んできたトーマツ イノベーション株式会社代表取締役社長 眞崎大輔氏だ。
都内で同社主催の女性リーダー育成セミナーが開催された。このセミナーの冒頭で眞崎社長は、人材育成を「世の中を映す鏡」と述べ、女性の活躍推進の問題点を前述のように指摘する。人材育成における課題が女性活躍推進の道を阻み、企業の進むべき道を暗中模索状態に陥れているという。
実情、「女性活躍推進」というキーワードに戸惑いを見せる企業は少なくないはずだ。
女性の社会活躍に必要なのは、企業の根本的な意識改革にある
今回トーマツイノベーションは、人材開発研究を行う東京大学大学総合教育研究センター准教授中原淳氏との共同調査研究「女性の働くを科学する」を実施。2016年9月から12月にわたり、男女別、職責別に計6階層の5,402名に対し、仕事との向き合い方や職場環境の実態を大規模に調査した。セミナーでは調査結果を通して、中原氏が企業が今後進むべき具体的な道筋を示唆している。
准教授 中原淳氏
調査結果サマリとしては次の4点。
①女性社員は働く意欲は高いが、キャリアを伸ばす機会が十分ではない
②女性が働き続けたいのは、平等、誠実で、残業見直しの雰囲気のある職場
③リーダーになりたての頃、女性は曖昧な状況・葛藤・板挾みなどでつまずく
④女性が昇進を受け入れるのは上司の細やかな説得次第
今回男女に分けて分析した結果、仕事観や職場観、昇進時の戸惑いや課題が男女では大きく異なることが判明したという。対象者のキャリア移行に合わせた、細やかな上司、企業側のサポートが、女性躍進につながるキーとなることが明らかになった。
「女性の活躍推進を実現するためには、女性だけがマインドを変えるべきだという従来の指導法には無理がある。女性の働き方を研究することは、日本企業全体の本質的な働き方の改革の必要性が浮き彫りになること。職場そのもののあり方が変わらないと、目標達成には至るはずがない」と中原氏は指摘する。
「企業内での女性のキャリアが、実務担当→リーダー→管理職と移行していく中で、そのトランジションに応じた支援を職場が続けていくことが何よりも重要である」という中原氏。
変革の時にある企業の道筋を導く立場として、どのようなことができるか。次のページから具体的に見ていきたい。