ファイアダンスで悪魔払い、ベトナムの伝統儀式

ベトナム北部トゥイェンクアン省のラム・ビン地区で開催された春祭りで、ファイアダンスの儀式に臨む人(2017年2月10日撮影)〔AFPBB News

 日本企業の投資先(アジア、オセアニア地域)で最も人気の国はベトナムとなった。2016年のジェトロ(日本貿易振興機構)の日系企業調査で明らかになったのだが、ベトナムで「今後1、2年で事業展開を拡大する」と回答した企業が一番多かった。

 中でも、卸売・小売業の拡大割合は、「78.4%」に達し、2位で73.5%のインドを突き放した。さらに、鉄・非鉄・金属、化学・医薬、電気機械器具分野でもベトナムの拡大割合は、それぞれ6割以上を記録し、断トツ人気だ。

 全体的に日本企業のベトナムへの投資拡大が今後、さらに加速化すると見られる。

 投資先としての魅力は、安価な労働賃金、人口約9400万人のうち、労働人口が約5500万人という豊富な労働力、さらに平均年齢が若い(約31歳)ことが挙げられる。

東南アジアの交通要衝

 また、石油、天然ガス、石炭などに恵まれたベトナムは国土がインドシナ半島を南北に走り、地理的にもASEAN(アセアン=東南アジア諸国連合)の中心に位置する。

 同地域第2位の経済大国のタイと、最大の経済大国のインドネシア、さらには中国(華南地域)を陸路で繋ぐ拠点に位置することが最大の利点の1つだ。

 とりわけ、ベトナム最大の都市、南部に位置するホーチミンは最大の商都で、中国、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポールなどと、陸海空路で結べるアジア地域の「経済帯路のハブ」となると見込まれているからだ。

 さらに、ベトナムにとって日本は最大の経済援助国だけでなく、安全保障の面でも、対中国で歩調を合わすアジアの同盟国だ。

 昨今、政治経済的に中国の影響力が増しているとはいえ、フィリピンやインドネシア、マレーシアなどと比較した場合、ベトナムは今、「アジアで最も信頼できる親日国」とも言える。

 しかし、親日的だから、同じ仏教国だから、日本人と考え方が似ているわけではなく、「日本で通用することは、ベトナムでは通用しない」と考えた方が妥当だ。

 そう、とかく日本人は外国人に“日本色”を求める傾向が強いが、日本人とベトナム人は、「違って当たり前」。

 とは言いながら、ベトナムへの投資リスクは、一企業にとって対処困難な政治経済文化的問題以外でも、ベトナムの人々の価値観や気質など、「現地の常識」を熟知することで、企業として最小限に抑えられるものでもある。

 ベトナム人は識字率が約95%で、一般的に勤勉で向上心が高く手先も器用で、資格・技能習得や転職などのために会社終業後、夜学に通う人がいる一方で、教育環境の格差も大きく、社会人としての常識や教育を備えた人が少ないとも言われる。

 また、多民族国家のマレーシアやシンガポールと比較し、英語のできる人材は少なく、日本語に関しては、さらに少ない。さらに英語と日本語を駆使する人は、かなり優秀で貴重な存在だ。ベトナムではこうした優秀な人は大抵、共産党で働いたり、技術者になる人が多い。