春節へ向けて「世界最大」の帰省ラッシュ 中国・北京

中国・北京の五輪公園に春節へ向けて展示された切り絵をみる親子〔AFPBB News

 中国最大の“民族大移動”が始まった――。

 今年の春節(旧正月)は1月28日で、中国では27日から2月2日までの1週間が正月休みだからだ。

 携程旅游(中国大手旅行サイト)の統計では、2017年は年間で中国人の旅行全体の支出総額が初めて5兆元(約85兆円)を突破すると言われ、特に今年は、「空前の海外旅行ブーム」という。

旅行先で圧倒的ナンバー1のタイ

 春節旅行で断トツ人気は「タイ」(携程旅游調べ)。実はタイは、今年の元旦連休でも圧倒的人気ナンバー1の旅行先で、昨年の年間渡航先(中国本土以外)ランキングでも堂々の3位(1位、2位が中国の香港、マカオ)に躍り出て、4位の韓国、5位の日本を引き離した。

 テロなどの影響から回復した2015年には、前年比70%増の約800万人の中国人がタイを訪れ、「観光客の約30%は中国人観光客」(タイ政府関係者)と、中国人にとって最も人気の旅行先となった。

 同年、日本へは前年比約100%増のほぼ500万人の中国人が訪れたが、対人口比(タイの人口は約6900万人、2015年)では、低迷するタイの経済状況の中、中国人観光客の影響は日本とは比較にならないほど大きい。

春節の風物詩の「ライオン・ダンス(獅子舞。中国語:舞獅)」。「招福駆邪」の縁起物で、銅鑼の音とともに登場し、派手な演奏をバックに、豪快、華麗な舞で新年を彩る(筆者撮影、以下同)

 さらに、最近では日本と同様、ロングステイ先としても人気急上昇。中国の中産階級が、穏やかな気候、コスト安、PM2.5などの大気汚染に悩まされない「アジアの移住先」として熱い眼差しを注いでいるほどだ。

 最近ではもともと親日のお土産屋さんでも漢字表記の看板が増え、「こんにちは!」から「你好(ニーハオ)!」とかけ声が取って変わっている。

 中国人相手にトラブルも多いが、中国人観光客急増で、良くも悪くもタイ社会に大きな影響を及ぼし始めている。

 もともと中国人がタイに興味を持ち始めたきっかけは、3人の中国人がタイで一攫千金を狙ってドタバタ喜劇を演じるコメディ映画『人再囧途之泰囧(Lost in Thailand)』(2012年公開)。当時、中国映画史上最高となる約13億元(約220億円)の興行収入を上げ記録的な大ヒットとなった。

 その影響で同映画の撮影地となったチェンマイやプーケットが特に人気で、ブランド品が格安で大量に買い漁れる“爆買い天国”のバンコクも欠かせないらしい。

 もう1つの理由は、中国政府がタイを早々に親族訪問先とし海外渡航解禁国に指定したのに伴い、タイ政府が段階的にビザ要件を緩和してきたこと。

 昨年11月末には、タイ政府は、2016年末から2017年初頭にかけ、大使館でのビザ申請費用免除、現地ビザ申請費用引き下げを発表。

 中国人観光客が急に増えるとトラブルも必然的に多くなる。昨年末、タイでは背後で中国マフィアが絡む、ツアー費は無料だが宝石店などで破格な土産品を強要する中国人相手のツアー「ゼロドルツアー」の取締り強化が図られ、中国人観光客が一時減少した。