「トランプ大統領になれば、主流派を支配した軍産が崩壊し、米国に民主主義が戻ってくる」――。
経済格差を背景に噴出した反エスタブリッシュメントの波は、米国に新しい政冶の風を吹かせる、とドナルド・トランプ氏に一票を投じたが、その有権者の期待は、どうやら裏切られそうだ。
というのも、トランプ新政権が米政権の中で最も大財閥(フリーメイソン)やユダヤマネー(イスラエルロビーの右派)という「影の権力」に傾倒する様相を帯びてきたからだ。
ロシア主導も米国回避で中東危機へ
中東和平への取り組みは今後さらにロシア主導で進むだろうが、和平を阻害するイスラエル右派とトランプ新大統領が連動すれば、利害が複雑に絡む中東危機をさらに高め、その火の粉は米国にも降り注ぐのは必至だ。
世界に君臨し影の権力とされる2大財閥と言えば、米国の「ロックフェラー財閥」と英国の「ロスチャイルド財閥」。
米国のWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)エスタブリッシュメントとされ、その中でも、名門最強とされるのがロックフェラー財閥。同財閥を代表格とし連携するのが、米国の政財界保守主流派である。
米国では初代大統領のジョージ・ワシントンを筆頭に、ハリー・トルーマンやフランクリン・ルーズベルトといった歴代大統領の多くが国際的秘密結社「フリーメイソン」のメンバーだったが、ロックフェラーも例外ではない。
ちなみに、ホワイトハウス、米国国会議事堂、ワシントン記念塔のほか、米国の象徴でもある自由の女神までもがフリーメイソンによって造られたもので、フリーメンソンが築いた国、それが米国なのだ。
中でも、ロックフェラー家は、南ドイツ出身のプロテスタント系と言われてきたが、実はセファルディム系ユダヤ(スペイン、ポルトガル出身)の血統である。
スタンダードオイルの創業者で、今も一族の中核事業は石油。世界最大の石油メジャー「エクソンモービル」を筆頭に、シェル、シェブロン、アルコ、テキサコなど石油市場を独占する世界を代表する石油王一族だ。
当然、石油だけでなく、情報通信(IBM、テキサス・インスツルメンツなど)、金融(メリル・リンチ、モルガン・スタンレーなど)、化学機械(ゼネラル・エレクトリック=GEなど)、自動車(ゼネラル・モータース=GMなど)、メディア(ウォール・ストリート・ジャーナル、AP通信、NBC放送など)の各産業界のグローバル企業を所有する世界経済を牛耳る大財閥だ。
ジェラルド・フォード政権下では、ネルソン・ロックフェラーが副大統領を務めるなど、上院議員を含め一族は政界入りも果たした。
ノーベル平和賞受賞者で米外交の象徴、93歳のヘンリー・キッシンジャー氏。ロッキード事件の黒幕の同氏は、米中国交樹立や米ソ核軍縮などで非情な交渉術を発揮してきた。
現在、トランプ次期大統領の外交顧問でもあり、「親露路線で、中国を討つ」(米政府関係者)ため、特使として側近とともに頻繁に訪露、訪中する筋金入り反共主義の”現役のユダヤ系政治家”だ。
同氏は、友人のネルソン・ロックフェラー氏の強い推薦でリチャード・ニクソン政権やフォード政権時代に、国家安全保障担当大統領補佐官、国務長官として抜擢された。巨大財閥がユダヤマネーの潤沢な資金をバックに政冶を影で操る米国の「金権政治」の基盤は歴代にわたって延々と受け継がれてきた。
そして、型破りかと思われたトランプ次期政権でも、その「伝統」が引き継がれそうなのだ。