今、ベトナムは大きな変革期を迎えている――。
成長が鈍化する他のアジア諸国を横目に、高い経済成長率(2015年は約6.7%増、インドに次ぐ2番目)を続けている。
「ポテンシャルのある国」(バラク・オバマ米前大統領)と注目され、世界中の企業が「豊富な労働力と安価な人件費」を求め生産拠点を中国からシフトしてきているからだ。
ポスト中国と言ってもいい好調な経済を牽引するのが、GDP(国内総生産)の半分以上を稼ぎ出す最大都市の商都、ホーチミン市(旧サイゴン)。
「東洋のパリ」と呼ばれ、古くからベトナムの経済的中心地として発展し、町には フランス統治時代の影響が今も色濃く残る一方、急成長に押され高級ホテルなどの高層ビル郡が聳え立つ。
ホーチミン市のあちこちに日の丸
その眼下には、道路からあふれ返るほどの雑多なバイクに、路地裏にはまだまだ貧困街が散在するといった「急成長と発展途上が同居する」新興都市ならではの光景が広がる。
ベトナム戦争後40年を経て、約830万人(2015年末現在)が住むこのベトナム最大の都市で、まさに今、都市開発やインフラ整備が目白押しだ。
裾野産業が脆弱なベトナムでは、諸外国からのODA(政府開発援助)、外資進出、さらには越僑と呼ばれる在外ベトナム人からの外貨送金は経済発展に欠かせない「三種の神器」だ。
そんなホーチミンでは今、街の至る所で日本の国旗「日の丸」を見かける。
2月28日から天皇皇后両陛下が国賓としてベトナムを初訪問するのにタイミングを合わせたわけではない。実はこれ、日本のODAによるベトナム初の都市鉄道(地下鉄)の建設工事が進行中のため掲げられているのだ。
駅ができる街の要所、要所の工事現場周辺には大きな文字「VIETNAM-JAPAN」とともに2国の国旗が描かれた看板が立っている。
ホーチミン市の中心部と郊外を結ぶ初の公共鉄道システム導入に世界が認める日本の鉄道技術が生かされ、ベトナムのさらなる発展に拍車がかかることは間違いない。