2020年、日本のODAで開業する地下鉄の駅に近い一等地にある高島屋ホーチミン店。週末は中間層や富裕層の家族連れが”日本流サービス”を満喫するために訪れる(筆者撮影)

 125億ドル(約1兆5000億円)――。

 この莫大なお金は、2015年、「越僑」が海外からベトナムに送金した額(世界銀行)とされる。10年前と比較すると、3倍以上に膨らみ、その額は年々増加の一途を辿っている。

 「越僑」とは、海外に居住するベトナム人や外国籍を持つベトナム系移民のこと。ベトナム外務省によると、現在、約450万人が約100カ国の世界に散らばっているという。

 そのうち約半数は米国、次いでフランス、カナダと、先進国が全体の8割を占め、べトナムの人口(約9350万人)の約5%に相当する。

越僑の送金はGDPの10%

前回のコラムでご紹介したが、低迷する諸外国を横目に、アジアで突出した経済成長を持続するベトナムを支える「三種の神器」は、諸外国のODA(政府開発援助)、外資進出と、この越僑からの海外からの巨額な送金だ。

 特に、“2つの祖国を持つ同朋”「越僑」からの送金は、ベトナムの国内総生産(GDP)の10%にも相当し、経済成長をしっかり確実に下支えしている同国の外貨収入の重要な資金源となっている。

 しかも、これは合法的なルートを通じ送金されている総額で、地下経済による送金はさらに、「2000億円以上、上乗せされる」(国際金融機関関係者)とも言われる。

 その総額は、ベトナムが受理する政府開発援助(ODA)を上回り、ベトナム経済にはなくてはならないライフラインだ。

 JETRO(日本貿易振興機構)によると、この経済成長に押され急増するベトナムの富裕層(年間収入が3万5000ドル以上)や中間層(同5000から3万5000ドル)は、それぞれ約127万人と約3800万人(2015年)で人口の42%に相当する。

 そのほとんどが、ホーチミンとハノイに集中している。