伝統の歌を歌うスワジランド女性たち(筆者撮影、以下同)

 スワジランドという国は、一風変わった国だ。

 ここは王国である。王家であるドラミニ家の大きな権力を持ち、国王ムスワティ3世は世界有数の金持ちで、私が訪れた2013年当時は13人の妻をめとっていた。王は毎夏、国じゅうの若い女性(処女限定)総出で行われるリードダンス(Reed Dance)を見物し、その中から美しい娘を選んで妻にしているらしい。

 若い女子たちは我こそは王妃候補だと名乗りを挙げ、上半身をあらわにしブッシュナイフ(処女性の象徴)を手に踊るということで、国外からはいろいろ批判もあるらしいが、国内では伝統行事なのでふつうに続いている。国民の平均所得が3000ドルほどであるのに対し、金持ち王の資産は1億ドルともいわれているので、女子たちにとっては究極の玉の輿を狙う機会でもある。人口100万人余の国で7万人の処女が集まることもあるのだという。なんだか昔話のようである。

 (ちなみにスワジランドのHIV感染率は高く、そのせいもあって、(特に女性の)平均寿命は世界トップクラスに低い。)

南アフリカに隣接するスワジランド(Googleマップ)
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予想以上の発展ぶりと夜の肌寒さ

 私が行ったときはリードダンスの時期ではなかったので、同じような伝統ダンスを伝統の歌とともに踊ってくれる歴史民俗資料館的な場所に見に行った。細かく刻まれるアフリカ的なリズムと裏腹に、歌と踊りは祈りに似ていた。美しい、と感嘆して私は宿に戻った。