11月4日の夜、NHKがウィキリークス(Wiki Leaks)の特集を放映していた。湾岸戦争以降、政府の手先と化した米国のメディアに代わり、真実を伝えようとする姿に共感を覚えた人は多いのではなかろうか。
権力の監視役から降り始めた大手メディア
ここまでインターネットが普及して発展を続けている現在、国家による戦争犯罪には目をつぶり、事実を明らかにするウィキリークスの創設者に責任をすべて押しつけようとするかのような米国政府の対応とそれを擁護する大手メディアの言い分には、いささか無理があった。
企業に当てはめれば、企業犯罪は野放しにしておいて企業の内部告発者だけを厳しく取り締まるようなものだ。
そうした企業が長続きするとは考えにくいし、してもらっても困る。
さて、国家がひた隠す事実が日本でもネットに流出した。
11月5日の未明に尖閣諸島での中国漁船による海上保安庁の巡視船への体当たり事件を撮影したビデオが、ユーチューブで白日の下にさらされてしまったのだ。
ウィキリークスと違い、日本政府の抗議を受けユーチューブを運営するグーグルは約10時間後に同映像を削除してしまったようだが、既に後の祭り。次々と動画のコピーがネット上に出回っている。
5日朝のテレビ番組は、ほぼこの話題で独占されていた。専門家に映像を細かく分析させて、船の軌跡やエンジンの出力の具合などから、明らかに中国船が意図を持って巡視船へぶつかってきたことを解説している番組がほとんどだった。
しかし、面白いことに、午後になって夕刊の紙面でビデオ流出の記事を読んでみると、トーンがすっかり変わっていることに気づく。情報がどうして漏れたのか、海上保安庁と検察庁の危機管理問題に焦点がすり替えられているのだ。
もちろん、中国船がぶつかってきたことは書いてある。しかし、紙面の多くは危機管理のずさんさに移っている。とりわけ、検察庁の不正をスクープした朝日新聞にその傾向は強く見られる。