なぜ長野のレタス農家は圧倒的に強いのか

ドラッカーで読み解く農業イノベーション(3)

2010.10.29(Fri) 有坪 民雄
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イノベーションの第2の機会──「ギャップ」

「それは地質学でいう断層の存在を示す。まさに断層はイノベーションへの招待である」
(『イノベーションと企業家精神』ピーター・ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社)

 多くの野菜農家にとって、最も嬉しい時期はいつでしょうか?

 こう書くとたいていの方が収穫の時期と答えるでしょう。その通りなのですが、実は収穫時期の中でも特に嬉しい時期があります。「端境期」と呼ばれる時期です。

 端境期とは、季節が移り変わり、産地が入れ替わる時期を言います。例えばある野菜の夏物の収穫が全国的に終わりつつあるのだが、秋物が出てくるには早いという時期。そんな時には需要があっても出荷量は減ります。すると野菜の価格は高くなり、農家の儲けは多くなるのです。

 旬の時期にはほとんど利益が出なくても、端境期に利益が出るので野菜農家をやっていけるとおっしゃる方もいるくらいです。

レタス、ハクサイ・・・、真夏の長野県のシェアは8割以上

 長野県の例を見てみましょう。長野県の野菜でケタ違いに出荷量が多いのが17万トンを出荷するレタスと、20万トンを出荷するハクサイ(白菜)です。

 東京市場の市況データ(2009年6~10月)を見てみましょう。以下の表をご覧ください。

東京卸売市場におけるレタスとハクサイの出荷状況(2009年6~10月)

 レタスもハクサイも暑さに弱い作物ですので、夏場に出荷できる地域はそれほど多くありません。出荷量が一番少なくなり、価格が一番高くなるレタスの8月、ハクサイの8~9月に注目して下さい。この時期の長野県のシェアは8割以上になります。レタスやハクサイが一番高い時期に、これだけのシェアを確保しているのです。需給ギャップを最大限に生かしたやり方と言えましょう。

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1964年兵庫県生まれ。香川大学経済学部経営学科卒業後、船井総合研究所に勤務。94年に退職後、専業農家に転じ、現在に至る。1.5ヘクタールの農地で米、麦、野菜を栽培するほか、肉牛60頭を飼育。主な著書に『農業に転職する』『農業で儲けたいならこうしなさい!』『戦略の名著!最強43冊のエッセンス』(共著)などがある。


農業の進む道

就業者の高齢化と減少、国際競争力の欠如など、様々な問題を抱える日本の農業。農業改革が遅々として進まないのはなぜか。農業を覆う問題の構造を明らかにし、あらゆる方面から日本の農業を活性化する方策を探る。