今週1週間は出張でワシントンに来ている。当地に来るのは昨年夏以来、古い友人に会うのが目的だが、当然話の大半は中国絡みとなる。

 そこで今回は、最近微妙ながらも確実に変化しつつあるように見える米国の対中国政策について現地で感じたことを書いてみたい。

対中政策を巡る政権内の対立

「アジアを騒がす中国」は米国にとって絶好のチャンス

米ニューヨークの国連で会談したバラク・オバマ米大統領と中国の温家宝首相(2010年9月23日)〔AFPBB News

 10月21日付ワシントン・タイムズに面白い記事が出ていた。現在オバマ政権内部で対中政策を巡り2つのグループが対立しているというビル・ガーツ記者の署名記事だ。

 ガーツと言えば(大変失礼だが)時々キワモノの中国批判記事を書くことで有名な当地の名物記者である。

 同記事によると、対中「へつらい」派の筆頭はジェームズ・スタインバーグ国務副長官とジェフリー・ベイダーNSCアジア部長。

 一方、対中「失望」派はヒラリー・クリントン国務長官、レオン・パネッタCIA長官、カート・キャンベル国務次官補、ウォーレス・グレッグソン国防次官補などだそうだ。

 同記者によれば、中国政府もこうした米国政府の内部対立を承知しており、何とか政策決定過程に影響を及ぼそうとしているらしい。いかにもありそうな話ではないか。もし東京で読んでいたとしたら、そのまま信じていたかもしれない。

 だが幸い、今自分はそのワシントンにいる。というわけで、早速筆者は旧知の関係者に直接「裏を取る」ことに決めた。

収斂しつつある対中政策

 今回最も驚いたことは、とにかく意見対立があると見られていた米国の対中政策が、最近収斂しつつあるらしいということだった。

 立場上情報源を明かすことはできないが、少なくとも今回に関する限り、ガーツ記者の記事は誤報に近いようである。そう考える理由は次の通りだ。

 第1に、米政府高官を含む関係者の多くが「今ほど米国の対中政策がまとまっている時はない」とほぼ異口同音に答えていたことだ。

 通常この種の答えには様々なニュアンスの違いが含まれて当然なのだが、今回はそれがほとんどない。こんなことは以前あまりなかったことだ。