先進国と呼ばれる国々の中で、経済の強さが最近特に目立っている国はどこか。オーストラリアというのが答えになるだろう。

 世界的な金融危機に巻き込まれながらも、早い段階で景気後退から脱出し、同国の経済は回復を続けている。2009年7-9月期の実質GDPは前期比+0.2%で、3四半期連続のプラス成長(前年同期比+0.5%)。4-6月期に比べれば成長率は減速しており、回復が力強さを増しているとまでは現状言い難いものの、失業率が10月の5.8%から2カ月連続で低下して12月には5.5%になるなど、雇用情勢の方もしっかり改善している。

 オーストラリア政府が2009年11月に公表した経済成長率の予想(forecasts)は、実質GDPが09/10年度(2009年7月~2010年6月)に前年度比+1.5%、10/11年度(2010年7月~2011年6月)に同+2.75%。名目GDPが09/10年度に前年度比+1.25%、10/11年度に同+5.5%である。さらに、11/12年度(2011年7月~2012年6月)の予測値(projections)は、実質が前年度比+4.0%、名目が同+6.25%。デフレ下の日本からすれば夢のような、高い数字が並んでいる。

 オーストラリア準備銀行(RBA)は、G20に属する国としては最初に、2009年10月に0.25%幅で利上げを実施した。その後も11月、12月と同幅で追加利上げを行い、政策金利であるキャッシュレートは年3.75%になった。高金利通貨の代表格として日本の個人投資家の人気を集めた前回利上げ局面でのキャッシュレートのピークは、2008年3月から9月までの年7.25%。「リーマン・ショック」が同年9月中旬に起こった後、RBAは景気の底割れを警戒して、10月から急ピッチで利下げを繰り返し、2009年4月にはキャッシュレートは年3.0%まで引き下げられた。

 ピークから4.25%という大きな幅で政策金利が下がったことを考えると、直近3回の利上げで実現した0.75%という上昇幅はいかにも小さいが、日米欧中央銀行の利上げ時期が見えておらず、おそらく2011年にずれ込むと予想されることに鑑みると、2009年中に利上げを3回も行ったというのは、やはり目立つ動きだと言える。なお、ほかに2009年中に利上げを3回実施した国には、イスラエルがある。欧州ではノルウェーが利上げに動いたが、2009年中は2回だった。

 では、オーストラリア経済には、どのような強みがあるのだろうか。

 RBAのスティーブンズ総裁は2009年11月に、「繁栄への道のり」と題した講演を行った。オーストラリア経済の堅調さの理由として同総裁は、国内金融機関が過度のリスクを取らなかったことや、事業法人がバランスシートの面で保守的な経営を行ったことなど、いくつかの点に言及。筆者が最も印象的だったのは、人口増加率が1960年代以来の高さになっているという、人口動態におけるオーストラリアの強みについての指摘である。