昨年、我が国にとっては劇的な政治的変化が生起し民主党政権が誕生した。国民の期待は大きかったが、その後、普天間問題、政治とカネの問題、マニフェストに掲げる政策の是非、予算・財政の問題等多くの課題を抱えたまま現在に至っている。
垣間見えた輝ける未来は夏空に見えた一瞬の虹のごとし
夏空に見えた一瞬の虹が瞬く間に消えた・・・そんな気さえする。
国益というものをほとんど正面から論ずることのない我が国であるが、「国民生活第一」を掲げる政権に対し、そもそもそのような骨太の議論を期待する方が無理なのであろうか。
案の定、米海兵隊普天間基地を「海外移設、最低でも県外」と公言していた総理がやっと在沖米海兵隊の重要性に気づいたが、時既に遅く、普天間基地移設問題は振り出しに戻るどころか、大きく後退してしまうことになった。
前政権までの日米協議により、平成26(2014)年までに代替施設を辺野古沖に建設(普天間は全面返還)、米軍の使用する多くの土地の返還、海兵隊員8000人、家族9000人、計1万7000人のグアム移転が決まっていたのである。
平成18(2006)年に名護市および宜野湾市との間で基本合意がなされ、当時の防衛庁と沖縄県との間で基本確認書が締結されていることを考えると、米国、沖縄等の関係者の怒りは、計り知れないものがある。
本質的な問題は、民主党の安全保障政策が、現実の世界情勢、軍事情勢を踏まえ、真剣に検討されたものではなかったことに尽きる。そしてその根底には、国家の安全保障軽視、軍事常識の欠如、日米安保体制下での米国への過度な依存体質、甘えが存在する。
さらに肝銘すべきは、このことが民主党政権の弱点というのではなく、現在の日本、日本人全体の弱点ではないかということである。
一国の平和と安全は一朝一夕になるものではない。長期にわたる強い意志と、継続的かつ相応の投資が必要不可欠である。
にもかかわらず、なぜ日本人は不思議なくらい安全保障に関わる意識が低いのか。その要因を探ってみたい。