同社がこれほど熱心に寄贈を進める背景には、この国の価値観も大きく影響している。米国の世論調査企業ギャラップ社が2013年に世界135カ国で寄附やボランティアについて行った調査によると、世界で最も積極的な国はミャンマーだったという。

 「日々の暮らしの中に寄附や寄進が根付いているだけに、この国の人々は企業の行動もよく見ている」と前田さん。

 つまり、CSR(企業の社会的責任)活動や人気スポーツに対するスポンサーシップは、そのまま企業イメージやマーケティングをも左右するほど、この国では重要な行動なのである。

マイクロファイナンスも活用

 とはいえ、同社も民間企業である以上、ビジネスとしての持続可能性も模索する必要があるのは当然のことだ。

 ここで想起されるのが、「BOPビジネス」という概念だ。

ソーラーストレージの仕組みについて地元テレビ局の取材に答える前田さん

 今から約10年前、米国の経済学者C.K.プラハラードは著書『ネクスト・マーケット』で、これまで市場経済から排除されてきた世界人口の8割を占める所得階層の最底辺(Base of the Pyramid)の人々、すなわちBOP層が今後、大きなマーケットになり得ると主張し、世界的に注目を集めた。

 おりしも少子高齢化による国内市場の縮小傾向に危機感が高まっていた日本でも、2009年ごろより民間企業が新規事業の一環としてBOPビジネスの検討を開始したり、国際協力機構(JICA)や日本貿易振興機構(ジェトロ)が企業の取り組みを後押したりする助成金制度を創設するなど、にわかに気運が高まった。

 では、無電化村に灯りを届ける前田さんも、やはりBOPビジネスを目指しているのだろうか?

 だが、その問い掛けに対し、前田さんは意外にもあっさりと「BOPビジネスとしてはまだ成り立っていません」と答えた。理由は明快だ。

 ソーラーランタンで50ドル、ソーラーストレージだと150ドルという本体価格がBOP層にとって高額であるため、いくら長期的に見れば従来のケロシンランプの燃料代より安くつくとはいえ、初期投資として手が届く範囲を超えているのだ。

 そこで、最終的なエンドユーザーであるBOP層にお金を出してもらう代わりに考えた方法の1つが、前出のような支援団体に購入してもらい、彼らからBOP層に寄贈してもらうことだった。