その利用者の中から、特にミャンマーの人々の声を反映させ、ミャンマーの人々のために開発された、いわば“ミャンマー仕様”の新商品がソーラーストレージだ。

 形状は細長く、ソーラーランタンに比べて明るさは5倍。一晩中利用することができる上、バッテリーの容量も大きいため、灯りとしてだけでなく、例えばスマートフォンなどの充電に使うことも可能だ。

 バッテリー寿命もランタンの約2倍の5年に延びた。昨年11月に完成し、お披露目したばかりの自慢の新製品だ。

学び舎に灯りを

 それから1カ月後の12月、前田さんはニャンウー郡アウニャ村にあるアウニャ小学校にいた。3000もの仏塔が空に伸びる幻想的な光景が広がり、世界遺産への登録も近いと言われるバガン遺跡で知られるこの地で、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)と連携して周辺の小学校にこのソーラーストレージを届けることになったのだ。

 灯りがついた瞬間、わぁっと歓声を上げて手を叩く子どもたち。「安心して学べる環境をつくることは大切です」と前田さんの言葉にも力が入る。500台のストレージを40校に届けることが目標だ。

ユネスコとの連携発表イベントの様子

 前田さんは、ソーラーランタンやソーラーストレージを無電化村に届ける際、常にこうして別の組織と連携することを心掛けている。

 相手は現地のNPO/NGOの場合もあれば、日本のNPO/NGO、人道支援機関、民間財団、社会的企業、国際機関の場合もある。

 同社が単独で動くことは、まずない。

ユネスコ、ミャンマー教育省にソーラーストレージを寄贈する前田さん(左から2人目)

 その理由について、前田さんは「われわれだけでは、実際に灯りが使われる場に立ち会い、どのように使われているかフォローアップすることができないから」とした上で、「その代わりわれわれは、地域に根差し、目的を持って活動している組織をパートナーに選び、それぞれの現場に全力で灯りをデリバリーすることによって彼らの活動をサポートすることはできる」と語る。

 実際、診療や手術などの医療活動を行う(特活)ジャパンハートや、子どもの保護と保健栄養事業に取り組む(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを通じて届けられたソーラーランタンは、出産時の介助などに役立てられているという。