よく人から、「どうしてあんな良い会社を辞めてまで、起業をしたのか?」と聞かれます。確かに大企業を辞めてリスクの高い起業をすることは、経済的には合理的な判断ではないかもしれません。嫌だから辞めた、という単純な話でもありません。ではどうしてそんなことをしたのかといえば、1つの答えがこれです。

「タイタニック」を見て戦慄した

 もうかなり古いのですが、『タイタニック』という映画がありましたよね。一般的にはラブロマンスの代表的な作品として知られていると思いますが、端的に言うと、時代を代表する豪華客船が、氷山に衝突してなす術もなく沈む話です。私はあの映画を観て、感動したり興奮したりするよりも、むしろ恐怖したんです。

 あんな大きな客船が、ちょっと舵取りを誤って氷山に衝突しただけで、真っ二つになって沈んでいく。乗客は、完全に安心しきって船旅を満喫しているわけです。今が危険なのかどうかすら、実際に氷山に衝突するまで分からない。これって、大企業に働いている自分と同じだな、と思ったわけです。

 全米が感動で涙している中で、1人戦慄し、震えたわけですね(笑)。

豪華客船である大企業

 いざ辞めようとすると強烈に気付くことなのですが、サラリーマンというのは非常に恵まれた身分なんです。最大の良さは、雇用と給料の安定性ですよね。これは起業・フリーランス側から見ればもう、「不公平」「ずるい」というレベルです。

 必ずしもいつも仕事で結果を出さなくても、それなりに真面目にやってさえいれば高い給料がもらえるし、ボーナスも出る。これは、サラリーマンではない人から見たら垂涎の的なわけです。さらに、格安で借りられる社宅や福利厚生施設、手厚い年金に社会保険などなど、過剰と言ってもいいくらいにサラリーマンは守られています。