――なぜ量子力学と相対性理論は一緒にできないのですか?

ディミ 私たちの宇宙に対しての理解を2つの「柱」に分けることができます。1つ目は量子力学です。量子力学を使って素粒子の振る舞い、電磁気力、強い力と弱い力を説明してくれる「標準模型」をつくりました。2つ目は重力、ブラックホール、宇宙の膨張を説明する相対性理論です。

 相対性理論は「場の古典論」で、宇宙を数字の連続分布として説明しています。その宇宙は決定論的です(決定論とは、あらゆる出来事は、その出来事に先行する出来事のみによって決定しているとする立場)。

 しかし、量子力学ではすべての性質は量子化されていて、特定の値しかとることができません。さらに、量子力学の世界は確率に支配されています。

 量子力学と相対性理論はこのように異なるので、一緒にすることができません。

――これまでの理論は、素粒子などをどのように説明していたのですか。

映像で表現されるヒッグス粒子。ピーター・ヒッグス氏とフランソワ・アングレール氏が存在を予言し、のちに存在が実験により確かめられ、両氏は2013年ノーベル物理学賞に輝いた。(c)Miraikan

ディミ いまできている素粒子の理論は「標準模型」。これは、物質を構成したり力を伝えたりする17個の素粒子の動きを説明してくれる理論です。それによると、素粒子は「点」として表現されます。サイズのない、数学的な点なのです。でも、サイズがゼロというのはただの近似で、現実にはサイズがゼロのものは存在しませんね。

――実在しているのに「ゼロ」は違和感がありますね。

ディミ あくまで計算しやすくするため。他のツールがなかったので、ゼロにせざるを得なかったのです。計算をシンプルにするためなのですが、明らかに無理があります。