私たちは学校で習うこと、あるいは職場での引き継ぎなど、人から教わる内容については知っていたり、あるいは覚え損ねて失敗を重ねたりします。
では、そういった「教わること」の「すぐ外側」はどうでしょうか。
学習指導要領と業務マニュアル
適切な例か分かりませんが、まず「学習指導要領」から考えてみましょう。
「ここまでの範囲を学校で教える」という、いわば「出題範囲」を定めたものです。これについては苦い思い出があります。
私は昭和39(1964)年、前回の東京オリンピックの年に生まれ育ちましたので、例えば数学は「数Ⅰ」「数2B」と「数Ⅲ」という分類で勉強しました。受験にしてもそれで受けています。
ところが私は浪人というものをし、それも欧州放浪とかわけの分からない青春の彷徨がありましたのでずいぶんの遠回りで、途中で「新指導要領」に切り替わってしまいました。
そうすると「代数幾何」とか「基礎解析」とか「微分積分」とか、数学の名前が変わっている。教える内容も、二次曲線がどっちかに増えただか減っただか、もう何も覚えていませんがあれこれ変化がありました。
多感なハイティーン、世の中の流れから置いていかれて欧州で1人、寂寥を噛み締めていた私は、そういう「指導要領」というもののつまらなさ、ばかばかしさを強く感じました。
しょせん人が決めたもので、数学の本質がそこにあるわけではない。むしろつまらない切り分けで学問を見えにくくしているのが指導要領だ、くらいの意識を持ったのは、そういうニュアンスのことを教えてくださった高校の恩師(江頭先生とおっしゃいました)の影響が大きいと思います。
指導要領で一番ダメだと思ったのは新指導要領の物理でした。「剛体」の運動を教えなくなってしまった。つまり点しか扱えない・・・。