毎週金曜日の夜。
 我が家のテレビのチャンネル権は、娘たちが握っています。
 翌日が休日ということもあり、私たち親もついつい甘やかし気味に。
 そんな娘たちのお気に入りは「ドラえもん」。

 私も子どものころ楽しみに見ていましたので、親子2代のファンになります。これからだけ世代を超えて愛される「ドラえもん」。いつか国民栄誉賞を受賞してもおかしくありません。

思い出があるから生きていける

 そんな我が家の幼稚園児の娘が、自分の部屋に置く学習机を欲しがるようになりました。どうやら、引き出しを開けて「タイムマシン」に乗るためらしいのですが・・・。

おもひで屋』(上杉那郎著・角川春樹事務所)

『おもひで屋』(上杉那郎著、角川春樹事務所、700円、税込)

 主人公の西沢素晴は、超高校級のピッチャー。プロのスカウトからも注目され、将来を嘱望されています。しかし、甲子園への道が断たれたことで、自暴自棄に。

 そこに追い打ちをかけるように、長年意識がなかった母親が死去してしまいます。そんな打ちひしがれる素晴の手元に、ある日「想い出チケット」なるものが届きます。

 それは、失われた思い出を見つけることができるチケットでした。不信感を抱く素晴でしたが、チケットを手に、思い切って見知らぬ父親の過去に旅立ちます。

 たどり着いた先は、甲子園の地方予選会場。素晴は、自分と同じ高校のピッチャーだった父親の竜太と出会うことができたのですが・・・。

 野球部監督の岩野や、素晴の祖父、そして素晴。主要な登場人物の造形は、正直上手いとは言えません。しかし、それを補って余りあるほどの、見事なストーリー展開が味わえます。